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ニュース一覧 2016.06.27 up

レポート

第6回 楽員国際交流事業リポート(都響ヴィオラ奏者・林 康夫)

CARMEN

本番(4月22日)© Jack Yam



東京都交響楽団は2009年度より、シンガポール交響楽団との楽員交流事業を実施しています。この事業は、東南アジアのオーケストラとして活躍の場を広げるシンガポール響と互いに演奏家を派遣し、交流を行っているものです。
6回目の実施となる今回は、都響からヴィオラ奏者・林康夫が4月18日~24日までシンガポールに滞在。シンガポール響からは9月に演奏家が来日予定です。

5日間にわたりシンガポール響のリハーサルや演奏会に参加した林康夫の体験リポートをお届けします。

客席を巻き込むエンターテインメント ―― 林 康夫(ヴィオラ奏者)

 

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2010年の交流事業で来日した
ヴィオラ奏者マリエッタ・クーさん(左)と

 シンガポールに4月18日から24日まで滞在、シンガポール響のガラ・コンサート『カルメン』(ラン・シュイ指揮/セミ・ステージ形式による全曲)に参加しました。

 シンガポール響も都響と同様、ふだんのリハーサルは3日間。ですが、シンフォニー・オーケストラである同響がオペラ全曲をやるのは大変で、今回のリハーサルは4日間。18日はオーケストラのみ、19日はソリストが入り、20・21日は合唱や児童合唱も参加。本番は22・23日、という日程でした。


 18日は移動日でしたので、私はリハーサルに19日から参加。自分も『カルメン』の組曲なら何回も弾いていますが、全曲は初めてでしたのでなかなかハードでした。もちろん譜読みはして行きましたが、オペラですからテンポが速くなったり遅くなったり起伏が大きい。

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マーライオン
左手奥のドームがエスプラネード・ホール

ついていくのが難しかったですが、実は周りのメンバーもバラバラで(笑)。「リハーサルではまとまらないけれど、本番に向けて急激に仕上げていくパワフルなオケだよ」と、交流事業の経験者から聞いていましたが、なるほどその通りでしたね。

 驚いたのは、突然の変更が多かったこと。本番2日目の第1幕の休憩後に、「○○の曲は弦楽器全員お休みです」と指示があったりする。本番が始まっていても、マエストロが「変えたい」と言ったらそうするし、メンバーも全く慌てることなく、臨機応変に対応していく。別の休憩の後、ステジに戻ったらヴィオラ・セクションの椅子の位置が変わっていたりして、それは「この方が指揮者を見やすいから」。どんなタイミングでも、良いと思ったらすぐに変える。日本ではあり得ないですが、だからアクシデントがあっても動じないのかもしれません。


 

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ヴィオラ・セクションのメンバーと

演奏は、実際のところアンサンブルが危うい場面もありましたが、オケのメンバーもお客さんも、そもそも「音楽のタテの線が合う美しさ」を求めていない感じがしました。奏者一人ひとりの個性が強く、自分がやりたいことをやる。音楽に内在する情熱、『カルメン』がもつパッションをどう描き出すのか。演出もちょっと変わっていて、ナレーターが抑揚をつけてストーリーを語ったり、児童合唱の登場シーンではこどもたちが客席とステージの間を通って笑顔で歌いながら出てきたり。エンターテインメントな、音楽を楽しもうという雰囲気があふれていました。

 音楽は世界共通の言語ですけれど、国によってそのあり方は様々で、「素晴らしいもの」は一つではない。それを実感しました。とてもエキサイティングな体験をすることができたと思います。ありがとうございました。

林康夫 出演公演:2016年4月22日、23日
Gala: Bizet's Carmen

(談:まとめ/友部衆樹 月刊都響2016年7・8月号より転載)

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