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ニュース一覧 2017.01.23 up

公演情報

若き巨匠、ルスティオーニにインタビュー(2月定期C)

「愛する都響のための特別なプログラム」―― 若き巨匠、ルスティオーニにインタビュー

取材・文:香原斗志(音楽ジャーナリスト)

Daniele RUSTIONI

 理由は子細にはわからないが、近年、イタリアからすぐれた指揮者が続々と輩出している。なかでも若手「三羽烏」と称されるのが、ボローニャ市立劇場音楽監督のミケーレ・マリオッティ(37)、東京フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任したアンドレア・バッティストーニ(29)、そしてダニエーレ・ルスティオーニ(33)である。
 私がルスティオーニの指揮で初めて聴いた曲はロッシーニのオペラで、その若さにしてロッシーニ特有の古典様式のツボを押さえていて驚かされた。だが、次にプッチーニを聴くと、プッチーニらしい叙情的なロマンティシズムが強く打ち出されていた。強烈な「自分らしさ」のかわりに、変幻自在に「その曲らしさ」をあらわせる指揮者なのである。本人も「イタリア人の指揮者はロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニを、それぞれの様式で指揮できるべきだ」と言ってはばからない。だが、これらイタリアのオペラ作曲家は、ルスティオーニのレパートリーの一部を占めるにすぎないのだ。
 ミラノに生まれ、同地のヴェルディ音楽院で学んだルスティオーニだが、その前から合唱にたずさわる母の勧めでスカラ座の少年合唱を経験し、ムーティが指揮するオペラを観て育ったという。音楽院卒業後はシエナのキジアーナ音楽院でジェルメッティに、ロンドンのロイヤルオペラでパッパーノに師事し、2008年からは2年間、サンクトペテルブルクのミハイロフスキー劇場の首席客演指揮者を務めた。その際、ロシアの交響曲の数々に触れてレパートリーにするとともに、次第に各国の作品に触手を伸ばし、今では「完璧な音楽家はドイツやロシアの交響曲、それにフランス音楽も指揮するもの」と言い切る。
 今年、東京都交響楽団の音楽監督でもある大野和士のあとを受けてフランス国立リヨン歌劇場の首席指揮者に就任するが、「フランス音楽になじんできた自分には自然なこと」と自信をうかがわせる。そしてこの2月、東京都交響楽団の定期演奏会で指揮するのも、フランス音楽を中心としたプログラムだ。そんなルスティオーニに、あらためて都響に寄せる思いやプログラムの狙いについて尋ねた。


――都響との初共演は2014年4月、東京二期会オペラ劇場の『蝶々夫人』でしたが、どのような印象を持ちましたか。

 都響のリハーサル室に初めて入ったとき、なんてすばらしいオーケストラなのかと思いました。ほぼ全員の譜面台に『蝶々夫人』の指揮者用の総譜が置いてあって、みな休憩時間にまでそれを勉強していたのです。こんな光景はほかでは一度も見たことがなく、演奏家として非常に誠実で、職業意識が高いことに驚かされました。そして実際にリハーサルを始めると、プッチーニの音楽に対して驚異的な情熱を見せるのです。そんな彼らと一緒に演奏できるのが本当にうれしかった。彼らは歌のラインをしっかり聴き、プッチーニがこめたあらゆるニュアンスを鋭敏に感じとって表現しました。ふたたび一緒に演奏できるのはこのうえなく幸せです。


――今回のプログラムはデュカス、ベルリオーズとフランスの作曲家の作品が中心ですが、そこにイタリア人のレスピーギの曲もはさまれています。どのような狙いがあるのでしょうか。

 フランス音楽を、私は日ごろからよく指揮します。実際、リヨンでもほかの土地でもそうですが、フランス人が演奏すると、弦を鋭く弾きながらも重くならないんですね。そこに独特の名人芸があります。私はベルリオーズの《幻想交響曲》が大好きですが、この曲はオーケストレーションの傑作で、オーケストラに名人芸を求めます。今回は《幻想交響曲》を演奏する前に、デュカスの《魔法使いの弟子》で感覚的効果と名人芸を示し、続いてレスピーギの《ローマの噴水》で色彩を表現します。そして、これらの2曲で示した二つの要素がベルリオーズにおいてひとつに重なるのです!
 レスピーギはイタリアの作曲家ですが、《ローマの噴水》ではフランスの書法にかなり近づいていて、特に冒頭と終りはフランスの印象派の絵画のようです。華麗でありながら洗練された曲で、多くのフランスの作曲家と同様に、水流を色彩的に描写していることに気づかされます。このプログラムはオーケストラが多彩な表現をするのにうってつけです。私は都響を愛するがゆえに、このロマンティックなプログラムを選び、オーケストラによる「ショー」のようにしたいと思ったのです。



Daniele RUSTIONI

――いよいよ今年、フランス国立リヨン歌劇場の首席指揮者に就任するわけですが、どのような目標をもっていますか。

 リヨンでマエストロ大野の後任を務めることはとても光栄です。マエストロ大野は芸術的水準を引き上げ、劇場じゅうからとても尊敬され、愛されています。私の目標は王道である19世紀の作品を多く取りあげること。やはりイタリア人ですからイタリア・オペラ、特にヴェルディを数多く演奏しながら、19世紀のレパートリーと幅広く向き合い、この時代の作品全体を掘り下げていきたいのです。すなわち、ロッシーニ『ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)』、ヴェルディ『ナブッコ』、『エルナーニ』、『アッティラ』、『マクベス』、『シモン・ボッカネグラ』、『ドン・カルロ』、『オテッロ(オテロ)』、ボーイト『メフィストーフェレ』は近く演奏するつもりです。これらのイタリア作品を、アレヴィ『ユダヤの女』やマスネ『ウェルテル』、ベルリオーズ『ベンヴェヌート・チェッリーニ』などのフランス作品やムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』などのロシア作品、R.シュトラウス『ばらの騎士』などのドイツ作品に加えていきます。ほかにはマーラー、ラフマニノフ、プロコフィエフらの合唱付きの管弦楽曲にも注力します。


――都響の定期演奏会を聴きにくる方々にメッセージはありますか。

 演奏会でみなさんにお会いできることを願っています。私はヨーロッパやアメリカでの仕事がどんなに忙しくても、その合間を縫って、1年に1回は日本に行きたい。それほど日本の文化と接するのが楽しみなのです。もちろん和食も!
 日本で過ごせるのは祝祭のような気分ですが、私が指揮する演奏を聴きにきてくださるみなさんも、同じ気持ちでいてくれたらうれしいですね。



 ヨーロッパでは「クラウディオ・アッバードの再来」と評されることもあるルスティオーニ。「三羽烏」のなかで一番イケメンだが一番気さくな若き巨匠が都響と繰り広げる「音のショー」。期待せずにはいられない。
2017年2月26日(日)14:00開演 東京芸術劇場コンサートホール
第825回 定期演奏会Cシリーズ

指揮/ダニエーレ・ルスティオーニ

デュカス:交響詩《魔法使いの弟子》
レスピーギ:交響詩《ローマの噴水》
ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14

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都響&ダニエーレ・ルスティオーニ出演
東京二期会オペラ劇場《トスカ》(主催:公益財団法人東京二期会)
2017年2月15日(水)18:30開演
16日(木) 14:00開演
18日(土) 14:00開演
19日(日) 14:00開演
東京文化会館

プッチーニ:トスカ(全3幕)日本語字幕付き原語(イタリア語)上演

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