プロムナードコンサート

五大陸音楽めぐり


2019年度のプロムナードコンサートは、来る2020年への気運醸成の意味も込め「五大陸音楽めぐり」というテーマのもといつにもまして多彩で親しみやすいプログラムをお届けします。

© Steve J. Sherman

五大陸音楽めぐり①
聴きどころ

新天地アメリカで活躍した、3人の作曲家たち

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 プロムナードコンサート「五大陸音楽めぐり」第1弾は、アメリカ大陸です。「European Composers in America」と題して、ヨーロッパで生まれ、アメリカ大陸に渡った3名の作曲家の作品をお楽しみいただきます。

 映画音楽のジャンルにおいて新天地アメリカで活躍したエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897〜1957)は、オーストリアでユダヤ系の家庭に生まれた人。幼少期より作曲し、神童と見做された彼は、マーラーにも才能を認められていました。若干23歳でオペラ「死の都」(1920)で大成功を納めるも、ナチスの台頭によりユダヤ系の彼はアメリカへと亡命。政治的理由から余儀なくされたアメリカ生活ですが、大戦中はハリウッドの映画音楽を手掛け、豊かなオーケストラ・サウンドによってのちの映画音楽にも大いに影響をもたらしました。戦後は再び芸術音楽への情熱を燃やし、1945年に作曲されたのがヴァイオリン協奏曲です。

  • © Yuji Hori

  • 左:アンドリュー・リットン、右:三浦文彰

 近年ますます評価が高まるこの協奏曲を、本公演では気鋭のヴァイオリニスト、三浦文彰が独奏を聴かせます。16歳という若さでハノーファー国際コンクールの覇者となり一躍脚光を浴びてから10年。国内外の主要オーケストラとのツアーを成功させ、一層の活躍を遂げる三浦が、この伸びやかなコルンゴルトの旋律を、鮮やかに歌い上げてくれることでしょう。
 
 タクトを取るのは、都響とは4度目の共演となるニューヨーク生まれの指揮者アンドリュー・リットン。リットンと三浦は、2017年にアメリカのユタ交響楽団で共演し、エルガーのヴァイオリン協奏曲で好評を博しました。今回の公演でもブリリアントで推進力あふれる音楽を聴かせてくれるに違いありません。
 
  そしてマエストロが、コルンゴルトの協奏曲とのカップリングにと推したのがフレデリック・ロウ(1901〜1988)作曲のミュージカル「マイ・フェア・レディ」序曲です。コンサートはこの序曲で華やかに幕開けします。ブロードウェイで1956年から6年6ヶ月に及ぶロングランを記録したミュージカル「マイ・フェア・レディ」は、オードリー・ヘップバーン主演の映画(1964年)を通じてご存知の方も多いことでしょう。作曲者のロウはベルリン生まれ。父親はベルリンとウィーンで活躍したオペレッタ歌手でした。ロウ自身の証言によれば、彼もまた13歳でベルリン・フィルと共演するなど、若くして才能を発揮していたとのこと。1924年、アメリカから出演依頼のあった父親とともに、ロウも大陸へと移住。ブロードウェイの作曲家を目指し、1940年代に台本作家のアラン・ジェイ・ラーナーと出会ってヒット作を生み出しました。「マイ・フェア・レディ」序曲の後半には、このミュージカルの名ナンバー《踊り明かそう》のメロディーも登場します。
 
  コンサートは、アントニン・ドヴォルザーク(1841〜1904)の交響曲第9番ホ短調「新世界より」締めくくられます。チェコの作曲家ドヴォルザークが、アメリカのニューヨーク・ナショナル音楽院に招かれ、大陸滞在中に作曲した名曲です。アメリカ先住民族を描いた叙情詩にインスピレーションを得て書かれた第2楽章のメロディーは、「家路」や「遠き山に日は落ちて」といった歌にも編曲され、広く愛されています。迫力の最終楽章を、リットンの指揮がいかに立体的に響かせてくれるかも、聴きどころの一つ。新天地で生み出された作曲家たち渾身の調べを、ぜひご堪能ください。

文/飯田有抄(音楽ライター)

© Yoshinori Kurosawa

五大陸音楽めぐり②
聴きどころ

東からの風、南からの熱を体感しよう

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「五大陸音楽めぐり」と銘打たれた今年度の都響プロムナードコンサートの第二弾のテーマは「東からの風、南からの熱」。クラシック音楽の中心地であった西欧の人々から見て「東」にあるアジアや「南」に位置するスペインなどの、情熱的で異国情緒に溢れた音楽が集められている。

オセアニアから日本に送られたメッセージ

 プログラムの中で一際目を引くのは、これが日本初演になる「オセアニアより」であろう。作曲者のピーター・スカルソープ(1929-2014)は、オーストラリアのタスマニア島出身で、オーストラリアの自然や先住民族を作品の中で描いていることが多い。

 この「オセアニアより」も例外ではなく、オセアニアで楽器として用いられる法螺貝の吹奏から始まり、アボリジニの大地での踊りを思わせるような打楽器が加わっていき、次第に融合してダンサブルなリズムを形成する。小難しい現代音楽ではなく、リズムや音響が我々の体内に入り込んできて、古い記憶を呼び覚ますように心を揺さぶる。これはぜひとも実演の空気の振動で体験しておきたい。

 実は、この曲は、1970年の大阪万博の際に依頼されて作曲した「日本のための音楽」の一部を2003年にスカルソープが改作したもの。オセアニアから日本に送られたメッセージでもあるわけだ。そこには、同じ法螺貝の文化を持つ日本の音楽に対する憧れと敬意が込められているのである。にも関わらず、これまで日本で演奏されなかったのは不思議ですらあるが、そういった意味でも今回の日本初演を聴き逃すわけにはいかないだろう。

  • 法螺貝(イメージ)

  • ピーター・スカルソープ © Courtesy of BRIDGET ELLIOT. All rights reserved.

「カワケン」こと川瀬賢太郎が都響定期初登場!

 今回のプロムナードコンサートを指揮するのは、都響定期演奏会では初登場になる川瀬賢太郎。「カワケン」の愛称で親しまれ、既成概念に囚われない生き生きとした音楽で現在最も注目を集めている彼にふさわしいプログラムである。とりわけ、リズムの新鮮なノリと鮮やかな色彩感が求められる「オセアニアより」は、川瀬の若い柔軟性と本能的とも言えるバランス感覚が最大限活かされる楽曲であり、彼のアイデア溢れる解釈に都響のメンバーも奮闘するに違いない。同じくバランスとリズム感と色彩感が求められるラヴェルの「ボレロ」も新鮮な名演が期待できる。都響のメンバーも、聴きにいらしたお客様も、そして川瀬本人も爽やかな笑顔で称えあう姿が目に浮かぶようだ。


エキゾチックな名曲たちにも注目

 もちろん、この日の聴きものはスカルソープとラヴェルだけではない。邦人作品を得意とする川瀬だけに、伊福部昭の「交響譚詩」を都響との共演でどのように聴かせるのか期待が膨らむ。さらに、ハープの世界的名手吉野直子をソリストに迎えたロドリーゴの「アランフェス協奏曲」のハープ版も実に興味深い。このハープ版は、吉野がしばしば取り上げているレパートリーで、往年のスペインのハープの名手ニカノール・サバレタが作曲者のロドリーゴに依頼して作らせたと言われている。上品なイメージのあるハープで、どこまで情熱的なスペイン情緒を表現できるのか楽しみである。

 プログラムには他に、J.シュトラウス2世の「エジプト行進曲」も含まれているが、この異国情緒たっぷりの作品を川瀬がどのように楽しませてくれるかは当日のお楽しみということにしよう。

© Yoshinori Kurosawa

文/佐伯茂樹(音楽評論)

© Sayaka Ikemoto

五大陸音楽めぐり③
聴きどころ

巨匠インバルによる待望の演奏会用序曲集
「ロシア・グレイテスト・ヒッツ」

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文/小室敬幸(音楽ライター)


 これまで130回以上も都響と共演を重ねてきた桂冠指揮者のエリアフ・インバルであるが、そのレパートリーの中核はなんといってもシンフォニー。ブルックナー、マーラーの一部の交響曲のように、80分ほどに達する場合は1曲勝負のプログラミングとなることもあれば、メインプログラムのみならず前半にも交響曲が組み合わされることがインバルの場合、珍しくない。もちろん、定番通りに前半は序曲と協奏曲(歌手をソリストとする歌曲集を含む)というラインナップもよく見かける。

 ところが “序曲以上、交響曲未満” の規模を持つオーケストラ曲を、インバルが滅多に振らないことをご存知だろうか。これまでの共演歴のなかでは、ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》より「前奏曲と愛の死」と、マーラーの交響詩《葬礼》(※交響曲第2番《復活》第1楽章の初稿)といったものが近いが、どちらもオペラや交響曲の抜粋だと思えば、あくまでインバルのレパートリー範疇だともいえる。

 それに対し、2010年3月21日に一度だけ取り上げられたチャイコフスキーの幻想序曲《ロメオとジュリエット》は、序曲というタイトルこそ付けられているが中身はほとんど交響詩。演奏時間20分ほどの、まさしく“序曲以上、交響曲未満”にあたる作品だ。これまで数多く作曲された『ロメオとジュリエット』を題材にした楽曲のなかで、最も激烈かつドラマティックな音楽なので当然、インバルとの相性も抜群! この日の演奏会でも、この曲の演奏が一番良かったという声が多かったと伝え聞く……のだが、こういった演奏効果が高く、派手めのショーピース的な性格をもつ作品をインバルが都響で取り上げたのは、後にも先にもこれっきり。誠に残念でならないと思っていたところ、なんと今年、9年振りにこの《ロメオとジュリエット》をインバルが指揮するというのだ!

 しかも組み合わされる曲目はお得意の交響曲ではない。フィナーレで大砲を模した音が鳴り響くド派手なチャイコフスキーの祝典序曲《1812年》に、クライマックスでバンダが加わって金管が倍増するショスタコーヴィチの《祝典序曲》と、これまでの都響では披露してこなかった演奏会用序曲ばかりをまとめて取り上げるというのだから、聴き逃がすべきではない。最近では、やはりインバルとしては珍しいブルックナーの改訂稿を取り上げるなど、信頼を寄せる都響だからこそ、これまで力を注いでこなかった音楽にも果敢に挑み、大成功を収めてこられたのだろう。日本で、都響だからこそ楽しめるこのプログラムは必聴である。

  • 2010年3月21日 プロムナードコンサートNo.337
    © Rikimaru Hotta

  • © Silvia Pastore

 そして、このコンサートではもう1曲、ラフマニノフによる5番目のピアノ協奏曲《パガニーニの主題による狂詩曲》もプログラミングされている。ソリストを務めるのはイタリアとオランダの血筋をひく美貌のピアニスト、サスキア・ジョルジーニ。2016年にモーツァルト国際コンクールで優勝したことで注目を集めた若手だが、その演奏スタイルは表面的な派手さとは無縁だ。エンリコ・パーチェ(カヴァコス、諏訪内晶子らの室内楽のパートナーとして知られる一流の室内楽ピアニスト)に師事し、イアン・ボストリッジ、ジャニーヌ・ヤンセン、マリオ・ブルネロといった超一流アーティストと室内楽で共演を重ねているジョルジーニは、オーケストラとの細かな対話が求められる《パガニーニの主題による狂詩曲》にぴったりの演目であろう。こちらも実に楽しみだ。

 親しみやすく、長すぎない(一番長いラフマニノフで25分ほど!)、誰にでもお楽しみいただけるインバル×都響の「ロシア・グレイテスト・ヒッツ」に乞うご期待あれ!

© Fumiaki Fujimoto

五大陸音楽めぐり④
聴きどころ

音楽の世界遺産―不滅の名曲集

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文/榊原律子(音楽ライター)


 「五大陸音楽めぐり」4回目は「音楽の世界遺産─不滅の名曲集」。さまざまな国の作曲家たちのオペラ、バレエ、劇音楽、交響詩、管弦楽曲を楽しむ、多彩なプログラムの演奏会だ。でも、多彩なだけではなく、「運命」を描いた曲が並んだプログラムでもある。作品の舞台となる国もいろいろ。各国の「運命のドラマ」と「音の旅」の聴きどころをご紹介しよう。

Photo by Kupono Kuwamura on Unsplash

運命のドラマを聴く

 まずは、イタリア・オペラの作曲家ヴェルディの歌劇『運命の力』の序曲。物語の舞台はスペインとイタリア。侯爵の娘レオノーラとインカ帝国の血を引くアルヴァーロは結婚を許されず、駆け落ちしようとするが侯爵に見つかり、さらにアルヴァーロの銃が暴発して侯爵が死去する不運から始まって、怒濤の運命に翻弄されていく。
 金管楽器による“運命の動機”で始まる序曲は、迫りくる運命に追い立てられるような音楽が展開するが、その中に登場する美しいメロディはオペラ本編で歌われるアリアだ。嘆くような木管楽器のメロディは、許しを乞うアルヴァーロと父の仇をとろうと迫るカルロ(レオノーラの兄)の二重唱。ヴァイオリンの清らかなメロディは、神に祈るレオノーラの歌。喜びに満ちたクラリネットのメロディは、レオノーラと神父の二重唱。都響の名手たちが歌い上げるアリアを堪能しよう。

 人は、生きているかぎり死という運命から逃れられない。「人生は死への前奏曲である」――ラマルティーヌの詩による交響詩(実際は曲完成後に詩がつけられた)が、ハンガリー生まれの作曲家リストの交響詩《レ・プレリュード》(前奏曲)だ。「人生、山あり谷あり」を表すように、朗々としたメロディが時に甘美に、時に嵐のようになり、最後は輝かしい行進曲風になる。
 ヴィルトゥオーゾ・ピアニストだったリストのピアノ曲は、細やかな音符が旋律の周りで華麗に奏でられることが多いが、オーケストラ曲の《レ・プレリュード》もまさにそう。メロディと共に、その周りを彩る音に注目して“リストらしさ”を味わおう。

 権力争いは、いつの世にも起こる人間の宿命だろう。ロシアの作曲家ムソルグスキーの歌劇『ホヴァンシチナ』は、ロシアのヨーロッパ化を推し進めることになるピョートル大帝の皇位継承をめぐって起こる、異母姉ソフィヤと銃兵隊長官ホヴァンスキー親子による反乱を描く歴史オペラだ。
 前奏曲「モスクワ河の夜明け」は、世界遺産・赤の広場の夜明けを描く曲。鳥がさえずり始め、民謡風のメロディが奏でられ、教会の鐘が荘厳に鳴り響く。実際に赤の広場にいると、時刻によっては鐘の音が鳴り渡るのだが、そんな音風景が感じられる曲でもある。都響が奏でるロシアン・サウンドに期待したい。

© Christophe Meneboeuf

             

 ゴッホが風景と空気に「日本」を感じた、南フランス、プロヴァンス地方の町アルル。しかし、ドーデの戯曲《アルルの女》の主人公フレデリは、アルルで出会った女に運命を狂わされてしまう。この《アルルの女》の舞台用音楽を作曲したのがビゼーだ。その演奏会用組曲のひとつ、第2組曲は、のびやかな「パストラーレ」、サクソフォンの音色が切ない「間奏曲」、フルートとハープのソロが美しい「メヌエット」、プロヴァンス地方の踊り「ファランドール」の4曲からなる。親しみやすいメロディで愛されているが、実は、最後にフレデリが自殺してしまう悲劇の音楽だ。音楽の奥にある青年の苦悩を意識すると、これまでとは違う、新たな響きが聴こえるかもしれない。

音で旅する

 日本から行きづらい国も、音楽を聴けば心はその地へ一飛び。《ガイーヌ》は、カフカスの国アルメニアのコルホーズ(ソ連の集団農場)を舞台にしたバレエだ。アルメニアは、トルコ、ジョージア、アゼルバイジャン、イランに接した国で、ハチャトゥリアンはこの地域の民族音楽の要素を反映させた。「剣の舞」はクルド人の踊りであり、「レズギンカ」はレズギ人の踊りのこと。どちらも強烈なリズムが特徴的。「バラの乙女達の踊り」と共に、魂を揺さぶられる演奏が楽しみだ。

Photo by Ahmad Odeh on Unsplash

  

 スペインのリズムに魅せられた作曲家は数々いるが、そんなひとりがロシアの作曲家リムスキー=コルサコフ。「スペイン奇想曲」は、ガリシア地方の歌アルボラーダや、スペインの民族舞曲ファンダンゴのリズムなどの素材を使いつつ、彼ならではのカラフルなサウンドでスペインを描いた曲だ。全5曲からなるが、各楽器のソロが大活躍する曲でもあり、特に第4曲「シェーナとロマの歌」はさまざまな楽器によるカデンツァが聴きどころ。またこの曲のヴァイオリン・パートにあらわれるアルペジオ+ハーモニクスというパッセージでは、リムスキー=コルサコフらしいブリリアントな響きが味わえる。都響の鮮やかな演奏に期待大だ。

 1曲ごとに国と世界観がガラリと変わる、バラエティ豊かなプログラムを指揮するのは小泉和裕。重厚な音楽ドラマに定評のあるマエストロの深い洞察から、これまでにない作品像を描き出してくれるに違いない。小泉×都響の名曲プログラムで聴く「運命のドラマ」と「音の旅」、どうぞお楽しみに!

© T.Tairadate

[公演中止]
五大陸音楽めぐり⑤
聴きどころ

柳原佑介インタビュー

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プロムナードコンサートNo.386 は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため公演中止となりました。
このコンサートでソリストを務めることになっていた柳原佑介のインタビューを公開いたします。「柳原にとってのフルートとは」「現在使用している楽器について」など熱い思いをお受け取りください。


文/柴田克彦(音楽ライター)

─ まずはフルートを始められてから現在までの歩みをお話いただけますか

始めたのは小学4年の9歳のときで、母がフルートを吹いている山形由美さんをテレビで見て、僕にちょっとやらせてみようと思ったのが始まりでした。幸い家の近くに石橋正治先生が住んでいらしたので、週1で習い始めました。母は小学生のうちにやめるだろうと思ってたらしいのですが、中学・高校では吹奏楽部に入ったり、その当時ドラクエにハマっていてCDを買って付属の楽譜で吹きまくってフルートを楽しむようになってました。そして石橋先生のご指導と類い稀なる強運を発揮し藝大に入ることが出来ました。藝大では4年間、金昌国先生に師事しました。大学4年のとき日本フィルに学生契約で入団し6年所属し、2004年10月、27歳のとき都響に首席奏者として入団させて頂きまして現在に至ります。

─ 今回演奏されるニールセンの協奏曲との関わりや曲の魅力などを教えてください

ニールセンのフルート協奏曲は、今ではみんなが勉強する曲かと思いますが、僕の学生時代はまだ流行っておらず、1学年下の高木綾子さんが初めて演奏したといった状況だったと思います。その後教えてる大学でこの曲をレッスンした際、とても面白い曲だと感じましたし、大学生のときに吹いておけば良かったと思いました。そして今から2年半前、大野和士さんがニールセンをやりませんか?と言われていると聞きまして、が…頑張りますって感じで返事をしました。
オーケストラ伴奏でのニールセンをちゃんと聴いたことなくて焦っていたところ、たまたま昨年の10月に日本音楽コンクールがありまして、本選に進んだ5人中4人がニールセンを演奏するというので聴きに行きました。オーケストラとの様々な絡み方を目の当たりにすると同時になんて大変な曲なんだ…とめげそうになりました。
このニールセンの協奏曲は、いろいろな場面のある曲です。基本的にフルートらしくない(?)カッコいいところが多いですが、さわやかな場面、悲しい場面、クラリネットと速いパッセージで絡んだり、バストロンボーンにいじめられたり(嘘)
私は速いパッセージを練習することは苦でないのですが、その量が多すぎて今は指ばかり練習しています。例えるならばドボ8の4楽章のソロが10個くらいある感じ。フルートは優美なイメージが強いかもしれませんが、私は小さい頃から速いパッセージをカッコよく吹くのに命をかけていたので、今は練習が楽しいです(強がり)

 

─ いつも演奏されている都響をバックにソロを吹かれることについての思い、また都響の音楽監督である大野和士さんとの共演への思いはいかがでしょうか?

物凄く嬉しいですし光栄ですが、プレッシャーも物凄いです。でもそれがあり過ぎるので逆に開き直れるのではないかなと。曲の大変さをまだ体験していないのでうまく吹けなくても仕方ないと開き直って、可能な限り練習し、ベストを尽くすしかないと思っています。でもできれば楽しみたいです。せっかくサントリーホールという最高のホールで演奏させて頂けますし。
大野さんは、リハーサルのときに話される説明がわかりやすく面白いので、曲のイメージが湧きやすいです。以前ベートーヴェンの「運命」の第2楽章の木管ユニゾンの悲しげなメロディを、「夏休みに昆虫採集に行くところ」と言われました。そういう突拍子もない説明をさらっと言って、それが演奏に反映されるといった経験をたびたびしてます。私にとって誰よりも信頼できる心強い指揮者です。
また今回の公演は「五大陸音楽めぐり」の5回目で、ドイツのR.シュトラウスとその周辺国の作曲家の近代音楽が並んでいますが、どの曲も見どころがありますし演奏者にとっても難しい曲ばかりです。「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」にはフルートのオーディションで定番のソロがありますし、ホルンが活躍する曲も揃っているのも、大野さんならではの考えがあるのかもしれません。

─ 柳原さんにとってフルートの魅力とは何でしょうか? またお使いの楽器についてお話しいただけますか

全ての楽器がそうだと思いますが、フルートも吹く人の個性がモロに出る楽器だと思います。そしてモロさも兼ね備えてる楽器でもある気がします。
今使ってるフルートは、ヨハネスハンミッヒというドイツの古い楽器です。以前はムラマツの14金を使っていましたが、ずっと銀で吹きたい気持ちがありまして、2年半前にからこの楽器を使うようになりました。この楽器は都響の奏者だった野口博司さんが数十年前に購入した楽団の楽器で、今は作られておらず中古でしか出回っていません。銀なので金の楽器より音量は出ないのですが、音色が好きなので使うようになりました。金よりも柔らかく響きが豊かで、木管アンサンブルがしやすい気がします。金の楽器以上に体調が反映される面もありながら、聴く人の心により強く訴える音が出せる楽器だと思っています。
ただこの楽器で協奏曲を吹くのは初めて。ニールセンは馬力も必要だと思うので、昨年の12月くらいまで金の楽器で吹こうかどうか悩んでいました。しかし結局今1番吹き慣れてる楽器で吹くことに決めました。金の楽器とはだいぶ音程の癖が違いますし、いまだにどんな曲もかなり練習しないと吹けない楽器なのですが、逆にたくさん練習して演奏もこなれていくメリットもあります。日本で使っている方も少ない楽器だと思うので、今回はその豊かな響きを聴いてほしいですね。

© T.Tairadate

 

公演情報

プロムナードコンサート No.382
五大陸音楽めぐり① 「European Composers in America」

2019年6月2日(日) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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指揮/アンドリュー・リットン
ヴァイオリン/三浦文彰

ロウ:ミュージカル『マイ・フェア・レディ』序曲
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 op.95 B.178《新世界より》

プロムナードコンサート No.383
五大陸音楽めぐり② 「東からの風、南からの熱」

2019年10月20日(日) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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指揮/川瀬賢太郎
ハープ/吉野直子

スカルソープ:オセアニアより(2003)(日本初演)
J.シュトラウス2世:エジプト行進曲 op.335
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(ハープ版)
伊福部 昭:交響譚詩
ラヴェル:ボレロ

プロムナードコンサート No.384
【五大陸音楽めぐり③ 「ロシア・グレイテスト・ヒッツ」】

2019年11月23日(土・祝) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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指揮/エリアフ・インバル
ピアノ/サスキア・ジョルジーニ

ショスタコーヴィチ:祝典序曲 op.96
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 op.43
チャイコフスキー:幻想序曲《ロメオとジュリエット》
チャイコフスキー:祝典序曲《1812年》op.49

プロムナードコンサート No.385
【五大陸音楽めぐり④ 「音楽の世界遺産─不滅の名曲集」】

2020年2月8日(土) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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指揮/小泉和裕

ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲
リスト:交響詩《レ・プレリュード》 S.97
ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』前奏曲「モスクワ河の夜明け」
ハチャトゥリャン:バレエ音楽《ガイーヌ》より「剣の舞」「バラの乙女達の踊り」「レズギンカ」
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34
ビゼー:《アルルの女》組曲第2番

プロムナードコンサート No.386
【五大陸音楽めぐり⑤ 「躍動する音のドラマ」】

2020年3月22日(日) 14:00開演(13:20開場)
サントリーホール

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公演中止

指揮/大野和士
フルート/柳原佑介

R.シュトラウス:交響詩《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》op.28
ニールセン:フルート協奏曲
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
R.シュトラウス:歌劇『ばらの騎士』組曲