都響スペシャル2020（11/23） │ 東京都交響楽団

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出演

指揮／小泉和裕

小泉和裕　Kazuhiro KOIZUMI（終身名誉指揮者）

　東京藝術大学を経てベルリン芸術大学に学ぶ。1973年カラヤン国際指揮者コンクール第1位。これまでにベルリン・フィル、ウィーン・フィル、バイエルン放送響、ミュンヘン・フィル、フランス放送フィル、ロイヤル・フィル、シカゴ響、ボストン響、デトロイト響、シンシナティ響、トロント響、モントリオール響などへ客演。新日本フィル音楽監督（1975～ 79）、ウィニペグ響音楽監督（1983 ～ 89）、都響指揮者（1986 ～ 89）／首席指揮者（1995 ～ 98）／首席客演指揮者（1998 ～ 2008）／レジデント・コンダクター（2008～ 13）、九響首席指揮者（1989 ～ 96）、日本センチュリー響首席客演指揮者（1992 ～95）／首席指揮者（2003 ～ 08）／音楽監督（2008 ～ 13）、仙台フィル首席客演指揮者（2006 ～ 18）、名古屋フィル音楽監督（2016 ～ 23）などを歴任。
　現在、都響終身名誉指揮者、九響音楽監督、名古屋フィル名誉音楽監督、神奈川フィル特別客演指揮者を務めている。

曲目

メンデルスゾーン：交響曲第4番イ長調 op.90《イタリア》

曲目解説
チャイコフスキー：交響曲第2番ハ短調 op.17《小ロシア》

曲目解説

　フェリックス・メンデルスゾーン（1809～47）は穏健なロマン派作曲家として知られてきたが、近年はドイツ楽壇を変革した功績の大きさが再認識されている。バッハやヘンデルの作品を復興してドイツの国民意識に影響を与え、ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者としてコンサートやプログラムのあり方を改革するとともに、ドイツ初の本格的な音楽教育機関となるライプツィヒ音楽院を創設するなど、ドイツ音楽界の刷新に彼が果たした役割は測り知れないものがある。
　メンデルスゾーンは幼時から恵まれた教育を受けて早くから楽才を発揮し、10代ですでに作曲家としてドイツでその名が知られるようになっていた。そしてさらに音楽家としての見聞を広める目的で1829年にイギリスに旅行した彼は、21歳となった1830年に改めてヨーロッパ大旅行に出発する。
　このたびの旅行はドイツ国内から、オーストリア、イタリア、スイス、フランス、そしてロンドン再訪を含む実に足かけ3年にわたる大掛かりな旅となった。イタリアへは1830年の秋に入り、北イタリアのミラノ、ジェノヴァ、フィレンツェなどを訪れた後、11月1日から翌年4月10日までの長期にわたってローマに滞在する。
　このローマで過ごしていた時期に着手したのが《イタリア》交響曲だった。1829年のイギリス旅行中にスコットランドで構想した《スコットランド》交響曲の作曲がその後まったく進展をみていなかったのに対して、《イタリア》交響曲はこのローマ滞在中に筆が進み、大体の形が出来上がる。しかしこの時は完成をみるまでには至らず、作曲は中断されたままとなる。
　この曲の創作が再開するのは、大旅行を終えてベルリンに戻った後の1833年初めのことで（1832年晩秋にロンドンのフィルハーモニック協会から交響曲の委嘱を受けたことがそのきっかけとなった）、3月13日に全曲が完成された。1833年5月13日、ロンドンでメンデルスゾーン自身の指揮で行われた初演は大成功を収めている（なお《イタリア》というタイトルは構想の際に手紙で触れていたものだが、結局作曲者自身は題として採用しなかった）。
　作品は明快で均整のとれた古典的な形式構成のうちにロマン的な叙情を湛えた、まさにメンデルスゾーンらしいスタイルによる傑作で、その豊かなカンタービレと躍動感、明るい響きからは、あたかも燦々と陽光輝くイタリアの光景と人々の生活の情景が浮かび上がってくるかのようだ。こうした絵画的表現は、まさに彼独特のロマン的美質といえるものである。
　もっともメンデルスゾーン自身は作品の出来に不満を感じていたようで、1834年に大幅な改訂に乗り出した。しかし結局この改訂は仕上げられないままになってしまう。そのため彼の存命中にこの交響曲は出版されることはなく、初演稿を所持していたロンドン以外では一度も演奏されることはなかった。
　やっと彼の死後4年経った1851年になってこの初演稿に基づいて初版が出版され、それ以後この作品は初演稿によって演奏されてきた。近年改訂稿のほうも楽譜が出されたが、これはあくまで改訂途中の段階のものであるため、演奏される機会はあまりない。本日も初演稿による通常版で演奏される。
　第1楽章　アレグロ・ヴィヴァーチェ　イ長調　8分の6拍子　ソナタ形式で、管楽器の刻みの上で歌われるヴァイオリンの明朗な第1主題はいかにもイタリアの陽光を思わせる。木管が奏する第2主題も軽快で明るい。展開部では短調の躍動的な新たな主題が出現してフガートが発展し、大きなクライマックスが築かれる。この新主題は再現部にも現れ、コーダに向けて盛り上がりを作り上げる。
　第2楽章　アンダンテ・コン・モート　ニ短調　4分の4拍子　歩むような運びのうちに厳粛な雰囲気を湛えた主要主題はどこかバロック風の趣が感じられ、かつては“巡礼の行進”といわれたこともあった。途中2度にわたって光が射してくるような長調のエピソードが挟まれる。なお主要主題は、メンデルスゾーンの師で、彼の音楽形成に大きな影響を与えた作曲家カール・フリードリヒ・ツェルター（1758～1832）の歌曲《昔、トゥーレにひとりの王様がいて》（ゲーテ詩）に基づいているとする見方もある。
　第3楽章　コン・モート・モデラート　イ長調　4分の3拍子　優美なメヌエット風の楽章だが、その中に夢見るような憧憬が感じられるところにメンデルスゾーンのロマン性が窺えよう。中間部ではホルン（とファゴット）の呼びかけが牧歌風の気分をもたらすが、後半にこの呼びかけがトランペットの加わった短調で奏されると雰囲気が一変し、一瞬緊張がもたらされる。
　第4楽章　サルタレッロ／プレスト　イ短調　4分の4拍子　表記のとおりイタリアの民俗舞曲サルタレッロの特徴を生かした楽章で、フルートが提示するサルタレッロ主題を中心に、急テンポの細かな音の動きで畳みかけるように運ばれ、途中からはやはりイタリアの民俗舞曲タランテッラの性格を持つ主題もフガートで織り込んで、さらに情熱を高めていく。イタリアの人々の生活や祭の賑わいを思わせるフィナーレで、最後も短調のままで閉じられる。
（寺西基之）

作曲年代	1831～33年
初　　演	1833年5月13日　ロンドン　作曲者指揮
楽器編成	ルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦楽5部

　ピョートル・チャイコフスキー（1840～93）の交響曲第2番は、主に1872年6月から8月にかけて、彼がウクライナに滞在しているときに作曲された。妹アレクサンドラがウクライナのカーメンカ（現カミアンカ）に住むダヴィドフ家に嫁いでいたため、チャイコフスキーは、以前からこの町をしばしば訪れていたが、1872年は、6月12日（ロシア旧暦5月31日／以下同）から8月26日（8月14日）まで、まずはカーメンカ、続いて友人の領地のあるニズィとウーソヴォという町で夏を過ごしている。オーケストレーションはモスクワに戻ってから行われた。12月4日（11月22日）付けの作曲者の手紙には、交響曲が完成したことが記されている。翌1873年2月7日（1月26日）、モスクワで行われた初演は熱狂的に受け入れられた。好評のため、4月8日（3月27日）に行われた再演も大成功だった。
　ところがチャイコフスキーは、このような好評にもかかわらず、この曲を2度改訂している。最初は4月の再演時で、このときはオーケストレーションにいくらか手を加えた程度だった。これに対し、1879年末から翌年の初めにかけて行った2度目の改訂は大規模なものだった。第1楽章は、第1主題を新しいものに変更し、もとの第1主題は第2主題に使うなど、序奏とコーダ以外ほぼすべて書き直した。第2楽章は速度指示が変更されただけだったが、第3楽章はオーケストレーションが大幅に変わり、第4楽章は再現部で大きなカットが行われた。その結果、改訂稿は初稿に比べて、第1楽章で118小節、第4楽章で146小節も短くなった。現在は、この改訂稿で演奏されるのが一般的だ。
　《小ロシア》というニックネームは、作曲者自身ではなく、批評家ニコライ・カシキン（1839～1920）によるものとされる。小ロシアとはウクライナの別名で、交響曲第2番にウクライナの民謡が使われているためにこう呼ばれるのだが、実際にはこの曲にはウクライナだけでなくロシアの民謡も用いられている。なお現在、「小ロシア」という名称はロシアから見た辺境の地として否定的な意味合いで使われることがあるが、チャイコフスキーの時代はそのようなニュアンスはなかったと思われる。
　第1楽章　アンダンテ・ソステヌート　ハ短調　4分の4拍子～アレグロ・ヴィーヴォハ短調　2分の2拍子　序奏付きソナタ形式。序奏でホルンが導入する旋律は、ウクライナ民謡《母なるヴォルガをくだりて》を変形したもの。主部は木管によるリズミカルな第1主題で始まる。第2主題は抒情的なもので、まずオーボエが導き、やがてヴァイオリンの美しい対旋律が加わる。展開部は序奏の旋律（クラリネット）で始まり、2つの主要主題を加えた3つの素材に基づいてエネルギッシュに進む。再現部で主要主題が扱われたあと、第2の展開部が置かれており、最後に序奏の旋律がホルン、続いてファゴットのソロで回想され、余韻を残して終わる。
　第2楽章　アンダンティーノ・マルチアーレ、クワジ・モデラート　変ホ長調　4分の4拍子　三部形式。主部は静かな行進曲。ホルンの信号音が導く中間部は、木管が歌い始めるロシア民謡《回れ、紡ぎ車よ》の旋律による変奏となっている。なおこの楽章は、チャイコフスキーが1869年に作曲したものの、上演されないまま破棄した歌劇『ウンジーナ（水の精）』第3幕の結婚行進曲に基づいている。『ウンジーナ』の他の素材は、劇音楽《雪娘》やバレエ《白鳥の湖》にも転用されている。
　第3楽章　スケルツォ／アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ　ハ短調　8分の3拍子三部形式。速い3拍子で書かれた、スケルツォらしいスケルツォ。フレーズの長さがめまぐるしく変化する点をはじめ、力強いリズムや荒々しい和声などには、1869年に初演されたアレクサンドル・ボロディン（1833～87）の交響曲第1番の影響が指摘されている。トリオ（中間部）は2拍子となり、民謡風の音楽となる。
　第4楽章　フィナーレ／モデラート・アッサイ　ハ長調　4分の2拍子～アレグロ・ヴィーヴォ　ハ長調　4分の2拍子　ロンド・ソナタ形式。華やかなファンファーレで始まるが、これはチャイコフスキーがダヴィドフ家の老執事から聞いたウクライナ民謡《鶴》の旋律に基づいている。主部では、同じ《鶴》の旋律が第1主題として何度も繰り返され、変奏されていく。第2主題は第1ヴァイオリンが歌う抒情的な変イ長調の旋律で、第1主題とは対照的な性格をもっている。両主題が扱われる展開部のあと、再現部では第2主題、第1主題の順に再現され、タムタムが打ち鳴らされたあと、プレストのコーダとなる。
（増田良介）

作曲年代	1872年6～11月
初　　演	初稿／1873年2月7日（ロシア旧暦1月26日）　モスクワニコライ・ルビンシテイン指揮
楽器編成	ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、タムタム、弦楽5部

【当日券情報】都響スペシャル2020（11/23）[11/20Up]
都響スペシャル2020（11/23）は感染症の拡大防止のため、都響WEBチケットにて当日券を発売いたします。
会場での対面販売は行いませんのでご了承ください。

販売日時：11/23（月・祝）10:00～13:30　無くなり次第終了
販売方法：都響WEBチケット（コンビニ支払・コンビニ発券のみ）
※お申込みには、都響WEBチケットへの事前登録が必要です（登録無料）。
※S・A・B席販売予定。
※当日券はシルバー割引・U-25割引・ハンディキャップ割引はございません。
※「来場されるお客様へのご案内」の内容に同意いただいた上でお申込みください。
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※本公演は都響スペシャルです。プロムナードコンサートではございません。
・基礎疾患（糖尿病・心不全・呼吸器疾患等）をお持ちの方や体調に不安のある方は、医師の判断や関係機関の情報をご確認の上、慎重なご判断をお願いいたします。
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但し、急な体調不良・発熱等の理由でご来場いただけなくなった場合は、期間内に下記フォームよりご連絡ください。購入者へチケット代金の払い戻しをいたします。連絡が無い場合の欠席については、払い戻しいたしかねます。（払い戻しには、半券が切り取られていない状態のチケットが必須となります）。
［払い戻しフォーム］https://www.tmso.or.jp/j/henkin/（公演当日8：00～13：00）
※お電話の場合、公演当日、都響ガイド（0570-056-057）にて払い戻し専用の電話番号をお知らせいたします。

医療関係者を主催公演へご招待－「ブルーチケット」

新型コロナウイルス感染症対策で日夜奮闘する、医療機関に務めている皆様に感謝の意を表し、都内の医療関係者およびそのご家族を11月・12月の主催公演へご招待いたします【各公演10席／抽選】。
「ブルーチケット」の詳細はこちらをご覧ください。

※「ブルーチケット」は「MAKE IT BLUE JAPAN実行委員会」の活動と連携しています。https://www.makeitbluejp.com/

聴きどころ

旅する作曲家たちが、訪れた土地の民謡や舞曲などに霊感を得て作曲した名品2曲をお届けします。イタリアの舞曲が躍動し、長調と短調の交錯が光と影を思わせるメンデルスゾーンの傑作。3つのウクライナ民謡が濃厚に歌いこまれてゆくチャイコフスキーの第2番。胸躍るメロディとリズムにあふれたシンフォニーで、オーケストラを聴く醍醐味も満喫しながら、しばし心の旅へ！

都響スペシャル2020（11/23）

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小泉和裕 Kazuhiro KOIZUMI（終身名誉指揮者）

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