萩谷金太郎

ヴィオラ

萩谷金太郎 (はぎやきんたろう) Kintaro HAGIYA

(2017年8月1日入団)

東京都出身。東京音楽大学卒業。桐朋学園大学院大学を修了。ヴァイオリンを藤原浜雄に、ヴィオラを百武由紀に、室内楽を上田晴子、岩崎洸、銅銀久弥の各氏に師事。PMF2011、カザルス国際音楽祭、アフィニス夏の音楽祭などに参加。京都市交響楽団契約団員、NHK交響楽団アカデミーを経て、2017年より東京都交響楽団ヴィオラ奏者。弦楽合奏団「石田組」メンバー。オーケストラや室内楽の他、スタジオレコーディングやライブサポート、作編曲など、多岐に渡って活動。

私の音楽はじめて物語

祖母の家で譜面台がなかったので<br />
タンスの前でヴァイオリンを練習(5歳ころ)
祖母の家で譜面台がなかったので
タンスの前でヴァイオリンを練習(5歳ころ)
 父がトロンボーン奏者(東京佼成ウインドオーケストラ首席)、母がピアニストでしたので、音楽をやるのが自然な家庭でした。姉がヴァイオリンを習っていたので、自分もやりたい、と始めたのが3歳の時です。
堀江智子先生に師事しました。技術的なポイントは押さえた上で、好きな曲を好きなように弾かせてくれるレッスンで、楽しかったですね。家にCDがたくさんあってよく聴いていたので、耳は肥えていたと思います。
身体を動かすのも好きだったので、中学で水泳部、高校で陸上部に入り、ヴァイオリンそっちのけで部活動に励んでいました。進路を決める時に、音楽ができる人は格好良く思えて、それで音大へ行こうと。受験を決めたのは高校3年の春で、そこからピアノもソルフェージュも始めたので慌ただしかったです。
東京音大へ入学、藤原浜雄先生(読響首席ソロ・コンサートマスター/当時)に師事しました。目の前で弾いてくださる音が衝撃的で、すぐに真似はできないのですが、そこからできるだけ吸収していくというレッスンでした。オーケストラの授業ではヴァイオリンの男子がヴィオラを担当することが多く、それがヴィオラとの出会いです。弾いてみたら結構面白かった。大学1年から男4人で自主的にカルテットを組み、あちこちで演奏したのですが、そこでもヴィオラを担当しました。
百武由紀先生には室内楽の試験で「ヴィオラの音色になっていない」とコテンパンだったのですが、なぜか気にかけていただいて、その後もカルテットや個人のレッスンをしていただきました。学部時代は、ヴィオラの音色やメロディを支える面白さに、だんだん魅了されていった気がします。
大学2年の時に大学の選抜オケのヨーロッパ・ツアーがあり、カルテットの仲間の中で私だけオーディションに落ちてしまった。本当に悔しくて、ようやく自分に火が点きました。また当時ハマっていた漫画の主人公が修行を経て強くなっていく様に感銘を受け、自分も「修行」をやらなければ(笑)と思ってしまった。それで藤原先生の勧めもあって、桐朋学園大学院大学(富山)へ進みました。ヴァイオリンで受験しましたが、大学院ではヴィオラをメインに。周囲に遊ぶところもないですし、1日10時間くらい練習していた日もありました。
パブロ・カザルス音楽祭(フランス)でハルトムート・ローデ先生に受けたレッスンも衝撃でした。自分はあまりに「きちんと」弾いていましたが、楽譜に書かれていることはほんの一部で、書かれていない本質を読み取って具現化しないと「音楽」にならないよ、と教えていただいた気がします。
大学院修了後、京響で契約団員を1年、N響アカデミーに2年在籍、都響のオーディションを受ける機会があり、2017年8月に入団しました。都響のヴィオラ・セクションは、一人ひとりが積極的に弾いていくのですが、アンサンブルがまとまっていくのがすごい。それに「合わせよう」と思うと埋もれてしまうので、役割を果たしつつ、1回1回の演奏を大事にしていきたいと思います。

(『月刊都響』2018年6月号 取材/文・友部衆樹)

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