リレーエッセイ Relay Essay

No2.チェロ
平田昌平(ひらたしょうへい)
Shohei HIRATA
平田昌平

好きなもの

「何が好きですか?」と聞かれたら、迷わず「釣り」と答えます。特に磯釣りが好きで、雄大で険しい自然の中に身を置くことも磯釣りの魅力です。最近では、長崎県の対馬や壱岐まで足を運ぶこともあります。
釣りは子供の頃から好きでしたがなかなか上達せずにいました。プロ級の腕を持つオーボエの広田さんに出会い、釣り場、道具、仕掛けなどの知識を得て、新しい世界が開けました。
もう一つ、都響に入ってから生涯の趣味ができました。「研ぎ」の世界です。それまで刃物を研ぐことには全く興味がありませんでした。釣り好きだというのに(笑)。
家にあった祖父の砥石がきっかけで興味を持ったのです。研ぎの名人ヴィオラの店村先生に祖父の砥石を見せたところ「これはいい砥石だね」と言われ、その後、天然砥石について調べました。天然砥石は2億5千万年前赤道付近の海中に堆積したプランクトンの化石が地殻変動により京都の亀岡地区にのみ現れた、という驚きの事実を知り、砥石に対する興味が一層深まり、狂ったように天然砥石を集めました。はじめは包丁や大工道具も研いでいたのですが、だんだん、同僚のオーボエやファゴットのリードナイフを研ぐようになりました。今では都響のメンバーからだけでなく、他のオーケストラプレーヤーからも依頼をいただいています。
プロの使う道具をメンテナンスする緊張感と、うまくできた時に喜んでもらえることにはとても満足感があります。
また、最近、DIYにもはまっています。もともと大工仕事は好きだったのですが、コロナ禍で活動が制限されていた時期に、自宅の和室を洋室にリフォームしたことがきっかけになりました。この春には、物置を設置するためコンクリート打設に挑戦しました。1.5トン近い材料を練る作業は非常に大変でしたが僕にとっては楽しい作業でした。


思い出の演奏会

思い出深い演奏会はたくさんありますが、特に記憶に残っているのは、まだ入団前の1990年、エキストラとして参加したサントリー特別公演で初めて演奏したマーラーの交響曲第2番です。指揮は若杉弘さんで、大規模な編成のオーケストラの響きが会場いっぱいに広がり迫力に圧倒され魅了されました。
また、1993年の第369回定期演奏会でペーター・マークさんの指揮によるメンデルスゾーン《真夏の夜の夢》もとても印象に残っています。マークさんは少ない動きにもかかわらずリズム感とフレーズの方向性が明確に伝わってきてとてもかっこよく見えました、またユニークな人柄もとても魅力的でした。「自分もこういう音楽家になりたい」と思ったことを今でも覚えています。

写真
長崎県壱岐の沖磯にて

おすすめの曲

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    …レスピーギの《ローマの三部作》の中でも、特に《ローマの松》は会場全体が楽器の一部になったかのような響きが広がり、オーケストラを生で聴く素晴らしさを実感できる作品です。