都響スペシャル（4/21）

終了日時：2022年4月21日（木） 19:00開演（18:00開場）

場所：東京オペラシティコンサートホールホール案内座席表

4/22定期Aと同演目

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出演

指揮／大野和士
ピアノ／藤田真央
ヴァイオリン／矢部達哉（都響ソロ・コンサートマスター）

プロフィール一覧

大野和士　Kazushi ONO（音楽監督）

都響およびブリュッセル・フィルハーモニックの音楽監督、新国立劇場オペラ芸術監督。
　1987年トスカニーニ国際指揮者コンクール優勝。これまでに、ザグレブ・フィル音楽監督、都響指揮者、東京フィル常任指揮者（現・桂冠指揮者）、カールスルーエ・バーデン州立劇場音楽総監督、モネ劇場（ベルギー王立歌劇場）音楽監督、アルトゥーロ・トスカニーニ・フィル首席客演指揮者、フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者、バルセロナ響音楽監督を歴任。
　フランス批評家大賞、フランス芸術文化勲章「オフィシエ」、リヨン市特別メダル、朝日賞など受賞・受章多数。文化功労者。
　2017年、大野和士が9年間率いたリヨン歌劇場は、インターナショナル・オペラ・アワードで「最優秀オペラハウス2017」を獲得。2019、21年に自ら発案した国際プロジェクトで『トゥーランドット』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』を指揮、ともに記念碑的な公演となり高い評価を受けた。新国立劇場では2019年以降、西村朗『紫苑物語』、藤倉大『アルマゲドンの夢』、渋谷慶一郎『スーパーエンジェル』を世界初演、また『ワルキューレ』『カルメン』『ペレアスとメリザンド』『ボリス・ゴドゥノフ』『ラ・ボエーム』『シモン・ボッカネグラ』と話題作を次々に手掛けた。
　2023年、作曲家マルティン・マタロンによる『メトロポリス』映画音楽コンサートでパリ管を指揮し、同作のフランス初演を成功へ導く。2024年3月に新国立劇場で『トリスタンとイゾルデ』を指揮、絶賛を博した。
　同じく2024年3月、新国立劇場はオペラ芸術監督としての現任期（2018年9月～ 2026年8月）に続き、再任（2026年9月～ 2030年8月）を発表した。
https://www.kazushiono.com/

藤田真央　Mao FUJITA（ピアノ）

　19年6月、チャイコフスキー国際コンクールで第2位を受賞。最後のガラ公演では、ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団と共演。喝采を浴びた。17年第27回クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝。
　21年夏、ヴェルビエ音楽祭での《モーツァルト：ピアノ・ソナタ全曲演奏会（5回）》はmedici.tvを通じで世界中に放映され、大きな注目を集めた。
　21/22シーズンは、ミュンヘンでゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィル、エルサレムでエッシェンバッハ指揮イスラエル・フィル、ロンドンでワシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・フィルなどと共演。22年3月シャイー指揮スカラ・フィルとの共演でミラノ・スカラ座にデビュー。今夏はシャイー指揮ルツェルン祝祭管との共演にてルツェルン音楽祭にデビューしたほか、ラ・ロック＝ダンテロン国際ピアノ・フェスティバル、ヴェルビエ音楽祭に出演。国内でも大野和士指揮東京都交響楽団と共演するほか、3年5回にわたり行う《モーツァルト：ピアノ・ソナタ全曲演奏会》を日本各地で継続。22年11月、ソニークラシカルと専属レコーディングのワールドワイド契約締結を発表し、2022年10月モーツァルト：ピアノ・ソナタ全曲集をリリース。

矢部達哉　Tatsuya YABE（ヴァイオリン）

洗練された美しい音色と深い音楽性によって、日本の楽壇のリーダーとして最も活躍しているヴァイオリニストの1人。1968年東京生まれ。桐朋学園ディプロマコース修了後、1990年22歳の若さで東京都交響楽団のソロ・コンサートマスターに抜擢される。1997年、NHK『あぐり』のテーマ演奏で大きな反響を呼ぶ。室内楽やソロでも活躍し、小澤征爾、若杉弘、フルネ、クレー、デプリースト、インバル、ベルティーニ、ギルバートらの著名指揮者と共演。
『音楽の友』2009年4月号では、読者の選んだ「私の好きな国内オーケストラのコンサートマスター」で1位に選ばれ、『文藝春秋』2016年2月号で「日本を元気にする逸材125人」の1人に選ばれている。1994年度第5回出光音楽賞、平成8年度村松賞、1996年第1回ホテルオークラ音楽賞受賞。ソニー・クラシカル、オクタヴィア・レコードよりCDが発売されている。
http://twitter.com/tatsuya_yabe

曲目

ヴァレンティン・シルヴェストロフ（アンドレアス・ジース編曲）：ウクライナへの祈り（管弦楽版） [日本初演]
シューマン：ピアノ協奏曲イ短調 op.54

曲目解説
R.シュトラウス：交響詩《英雄の生涯》 op.40

曲目解説

　ローベルト・シューマン（1810～56）は若い時期の1830年代にはほとんど専らピアノ独奏曲のジャンルに作曲を集中していた。特に1830年代半ば以降は師のフリードリヒ・ヴィークの娘クララ（1819～96）への熱い愛が創作の霊感の源泉となり、ピアノ曲の傑作を次々と生み出している。そして父ヴィークの猛反対を押し切ってクララとの結婚にこぎつける1840年、一転してリート（歌曲）を集中的に作曲したシューマンは、翌1841年に今度は管弦楽に挑戦することとなる。
　この年に生まれた管弦楽作品としては交響曲第1番《春》や交響曲第4番（第1稿）などがあるが、ピアノ独奏と管弦楽のための単一楽章による協奏作品《幻想曲》もこの年の所産である。当代きってのピアニストであった愛するクララのために協奏作品を書きたいという思いはすでに1830年代から抱いていたようで、それがシューマンにとってのこの“管弦楽の年”にやっと実現したのだった。この《幻想曲》は同年、クララの独奏によって初演されたが、シューマンは4年後の1845年にこれを改訂し、後ろにさらに2つの楽章を付け加える。こうして現行のピアノ協奏曲イ短調が生まれることとなった。
　この協奏曲にクララへの想いが込められていることは第1楽章第1主題に示唆されている。この主題は「c−h−a−a（ハ−ロ−イ−イ）」の動機で始まるが、これはクララの愛称キアラChiaraを音名化したものなのだ。また作曲にも優れた才能を発揮したクララ自身がすでにシューマンに先駆けて10代半ばでピアノ協奏曲（1835年完成）を書いていたが、シューマンの曲はそのクララの協奏曲をモデルとしたと思われる点もある。いずれにせよ、ピアニスティックな技巧とシンフォニックな有機性を融合させつつロマン的な幻想味を打ち出した傑作である。
　第1楽章　アレグロ・アフェットゥオーソ　イ短調　先述のように当初単独で《幻想曲》として書かれた楽章。強烈な管弦楽の和音にピアノが激しいソロで応える出だしは印象的だ。続いてオーボエに出る第1主題の冒頭が先述した「c−h−a−a」のクララ動機。またこの第1主題はベートーヴェンのオペラ『フィデリオ』で獄中のフロレスタンが歌うアリアの旋律に酷似している点も興味深い。楽章はもちろんソナタ形式をとるが、その扱いはかなり自由で、幻想曲の名にふさわしい特質を示している。
　第2楽章　間奏曲　アンダンテ・グラツィオーソ　ヘ長調　題のとおり間奏的な楽章で、ピアノと管弦楽とが対話するように進む。3部形式で、中間部ではチェロが美しい旋律を歌う。クララ動機が長調化（c♯−h−a）するブリッジを経てそのまま切れ目なく次の楽章へ。
　第3楽章　アレグロ・ヴィヴァーチェ　イ長調　明朗でエネルギッシュな第1主題に始まるソナタ形式のフィナーレ。独奏と管弦楽がシンフォニックに絡みつつ、鮮やかな展開を繰り広げていく。
　（寺西基之）

作曲年代	第1楽章／1841年　第2、3楽章／1845年
初　　演	第1楽章のみ《幻想曲》として／1841年8月13日　ライプツィヒ全曲／1845年12月4日　ドレスデン独奏はいずれもクララ・シューマン
楽器編成	フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦楽5部、独奏ピアノ

　ドイツ・ロマン派の最後の作曲家といわれるリヒャルト・シュトラウス（1864～1949）が生み出した数々の交響詩は、フランツ・リスト（1811～86）によって確立されたこの標題音楽的曲種にひとつの頂点をもたらしたものといってよい。巧みな管弦楽法、指導動機の活用、全体の綿密な構成をとおして、ストーリーを浮かび上がらせ、気分や雰囲気を喚起し、各場面のリアルな音画的描写を行っている。
　彼の交響詩の中でもとりわけ長大な《英雄の生涯》は1898年、シュトラウスの壮年期に完成された。内容は、一人の英雄＝作曲家が、敵＝批評家たちに非難されながらも、伴侶の愛を支えにし、敵と戦って勝利を収め、自らの業績を誇りながら、最後に隠遁生活に入る、というものである。原題は「Ein Heldenleben（或る一人の英雄の生涯）」で、はっきり誰とは指していないが、この英雄が作曲者本人に重ねられていることは（自身は否定しているものの）、業績を描く部分で自分の過去の様々な作品の一節を次々引用していることなどから明らかだ。たしかに隠遁生活に入る結びは当時の彼の現実とは違い、実際の隠遁生活は、半世紀後に非常に寂しい形で迎えることになる。
　その意味では彼の生涯そのままでなく、フィクションも交えた交響詩なのだが、実は結末を引退というフィクションにしたところにこそ、この作品の自伝的意味合いが隠されていると思われる。
　この交響詩が作曲された頃、シュトラウスは作曲家としての大きな曲がり角にあった。5年前の1893年、彼は自身にとって初のオペラ『グントラム』を書き上げる。すでに交響詩作家として名声を博していたシュトラウスだが、ワーグナー信者の彼にとってオペラ分野への進出は大きな夢で、『グントラム』はその意味でオペラ作家としての自らを世に問う重要な第1作だった。ところが結果は失敗に終わり、厳しい批判を浴びてしまう。しかしこの失敗はオペラへの彼の意欲をさらに燃え立たせるのだ。
　そのような時期に書かれた交響詩が《英雄の生涯》というわけで、批評家からの批判に敢然と立ち向かうこの作品の英雄はまさに当時の彼の姿に重なるが、注目したいのは、実際の人生まだ半ばにして、シュトラウスはそれまで創作の中心にあった交響詩の創作をこの《英雄の生涯》で打ち止めとしたことである。そのことと作品の内容を照らしてみると、彼は、オペラ作家としての第二の人生に乗り出すために、これまでの交響詩作家としての活動からの引退をこの作品で示したかったのではないかということが浮び上がってくる。これ以後に書かれた2つの交響詩的作品《家庭交響曲》と《アルプス交響曲》を彼が敢えて交響詩でなく交響曲と題したことにも、彼のそうした姿勢が窺える。《英雄の生涯》を境に交響詩作家シュトラウスの栄光の生涯は終わり、新たにオペラ作家シュトラウスの生涯が始まるわけで、実際20世紀に入ってから彼はオペラの分野で輝かしい成功を収めることとなる。
　それにしても《英雄の生涯》の書法は綿密きわまりない。数々の動機を巧緻に張り巡らして標題内容を描き出すその手法は凝ったものがあるし、4管編成（ホルンは8本）による表出力豊かな管弦楽の用法も実に至妙、さらに全曲を大きなソナタ形式のように論理的に構成しながらその中に多楽章的な性格を盛り込むという造型もきわめて巧みで、まさに規模・内容ともにシュトラウスの交響詩の集大成というに相応しい傑作となっている。スコアには特に記されていないが、全体は以下の6つの部分からなっている。

　1.「英雄」　勇壮な英雄主題に始まる。広い音域に跨がる息の長いこの主題を構成する諸動機は全曲通して様々に用いられる。
　2.「英雄の敵」　英雄を非難する敵（批評家）を木管群の半音階的主題が描く。彼らの小者ぶりを示すようないかにもちょこまかした主題だ。一方、英雄の不機嫌な様子がテューバの動機で示される。『グントラム』失敗の体験がこの部分に重ね合わされていることは間違いない。
　3.「英雄の伴侶」　英雄の伴侶（独奏ヴァイオリン）の登場。作曲者自身この伴侶が自分の妻のイメージであることを認めている。優しかったり怒ったり妖艶だったりなど、気分の変わりやすい彼女の様子を、ヴァイオリンが、甘美な伴侶主題の切れ目にカデンツァ的部分を挟みつつ描き、やがてシュトラウスならではの官能的な管弦楽の響きによる濃厚な愛の表現に高まっていく。なおシュトラウスの妻は『グントラム』の初演でヒロインを歌ったソプラノ歌手パウリーネ・デ・アーナ（1863～1950）で、その後まもなく彼と結婚し、彼の支えとなった。
　4.「英雄の戦い」　舞台裏のトランペットを合図に英雄と敵の戦いが始まる。大砲や小銃や剣の音を思わせるリアルな戦争描写の形で戯画化している点が面白く、英雄を励ます伴侶主題も現れる。最後は英雄の勝利（英雄主題の力強い再現）で終わる。
　5.「英雄の平和時の所産」　シュトラウスの以前の諸作品の一節が次々重なるように現れる。交響詩はもちろんのこと、幾つかの歌曲、そして何より『グントラム』からの引用が多い点がいかにも意味ありげだ。
　6.「英雄の隠退と完成」　テューバの不機嫌動機、不安に満ちた半音階の奔流が英雄の心の葛藤を示唆するが、やがてイングリッシュホルンの牧歌や、ヴァイオリンに再現される愛の主題が、英雄の隠遁を示す。途中、敵との戦いが一瞬悪夢のように蘇るものの、独奏ヴァイオリンの伴侶主題が英雄を再び落ち着かせ、ホルン（英雄）と独奏ヴァイオリン（妻）が静かに寄り添う中、穏やかな終結に至る。なお初稿では最後はpppで終わるようになっていたが、その後シュトラウスは、管楽器と打楽器による厳かな響きで閉じる現行の形に改訂した。
　（寺西基之）

作曲年代	1898年
初　　演	1899年3月3日　フランクフルト　作曲者指揮
楽器編成	ピッコロ、フルート3、オーボエ4（第4はイングリッシュホルン持替）、小クラリネット、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット3、コントラファゴット、ホルン8、トランペット5、トロンボーン3、テナーテューバ、テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、小太鼓、タムタム、深胴太鼓、ハープ2、弦楽5部

【ソリスト・アンコール】（4/21up）
モーツァルト：ピアノソナタハ長調 K.545 より第1楽章アレグロ
（ピアノ／藤田真央）

【当日券情報】都響スペシャル（4/21）（4/20up）
都響WEBチケットにて当日券を発売いたします。
会場での対面販売、及び都響ガイドでの電話販売は行っておりませんのでご了承ください。

販売日時：4月21日（木）10:00～18:00　無くなり次第終了
販売方法：都響WEBチケット（セブンイレブン支払・発券／カード払い・電子チケットのみ）
※お申込みには、都響WEBチケットへの事前登録が必要です（登録無料）。
※S・A・B席を販売。
※当日券は会員割引、U-25割引以外の割引はございません。
※U-25割引の当日券はカード払い・電子チケットのみ。
　その他割引をご希望の方は前売りにてお求めください。　
※「来場されるお客様へのご案内」の内容に同意いただいた上でお申込みください。

平和への希求を音に託して、ウクライナ出身作曲家の楽曲を演奏します
詳細はこちら（4/19up）

都響スペシャル開催日時、及び、公演会場の変更について詳細はこちら（11/25up）

※等間隔での空席設定は行いませんが、引き続き、感染症の拡大防止のため、一部の座席は販売いたしません。また、政府や自治体によるイベント開催要件に変更があった場合は、開演時間の変更、販売の一時停止や入場者数上限の設定等を行います。
ご購入前に最新情報をご確認の上、ご購入くださいますようお願いいたします。
※急遽出演者や曲目変更、または公演中止となる場合がございます。公演中止の場合を除き、払い戻しはいたしません。

※基礎疾患（糖尿病・心不全・呼吸器疾患等）をお持ちの方や体調に不安のある方は、医師の判断や関係機関の情報をご確認の上、慎重なご判断をお願いいたします。当面の間、当日券は必ず販売いたします。外出や体調に不安のある方は当日券（都響WEBチケットのみ）をご検討ください。
※必ず、「来場されるお客様へのご案内」の内容に同意いただいた上でお申込みください。

聴きどころ

2022年度シーズンの幕開けは、音楽監督・大野和士指揮による、堂々たるドイツ・ロマン派傑作選です。今や日本を代表するピアニストの一人として不動の人気を誇る藤田真央を迎えてのシューマンは、孤高の佇まいの中に親密さが垣間見える詩人の横顔。そして、ソロ・コンサートマスター矢部達哉の妙技と共に描き上げるシュトラウスは、悠揚迫らぬ英雄の肖像。最高の布陣で奏でる充実の響きが大空間を満たします。