世界で人気沸騰中の指揮者ロトが再び都響に登場!(2/2、2/3)

ニュース

©François Sechet

フランソワ=グザヴィエ・ロト(1972~)、テオドール・クルレンツィス(1972~)という40代後半を迎えたふたりの指揮者が、今後30年、指揮の世界でフロントランナーとして業界を牽引していくことは、もはや世界中の評論家や熱心なファンの間で約束されているようなものだ。

40代後半なんて、まだそうした判断をするには早すぎると思われるだろうか? しかし、かつてニコラウス・アーノンクールがコンセルトヘボウ管弦楽団にデビューを果たし、モダン・オーケストラにも古楽の流れを持ち込み始めたのが46歳の年、あるいはサイモン・ラトルがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者・芸術監督に就任したのが47歳だった。それまで“鬼才”や“異端児”として評価されてきた存在がメインストリームに受け入れられることで、後続のフォロワーが次々と登場。時代に変革を起こしたのが40代後半だったのだ。

好き嫌いこそあれ、現代のオーケストラ芸術を語る上でアーノンクールやラトルの存在を無視できないように、今後のオーケストラの発展を考える上ではロトとクルレンツィスというふたりがそうした指揮者として認知されていくはずであろう。

©Rikimaru Hotta

そのロトが2月2日と3日に都響の指揮台に登場する。2016年振り2度目のことだ。2018年に手兵である古楽オーケストラのレ・シエクルと《春の祭典》をメインプログラムに据えた来日公演が大成功を収めたことで、口コミやSNSでもその驚異的なパフォーマンスが話題になった。この時の演奏の何が凄まじかったかといえば、もう充分に知ったつもりでいたピリオド・アプローチに、まだまだ未知の可能性が拓かれていることを提示してくれた点にあった。

そもそもロトは、単に作品が書かれた頃の楽器を使うのではなく、初演当時の楽器を復元しようと徹底したこだわりをみせるところが、それまでの古楽系指揮者と違っていた。また、複雑な楽曲ほど音程やリズムが甘くなったりすることも珍しくなかった古楽器でも、現代のモダン楽器と同等の正確さで演奏が可能なことを示してくれた。そして何より、その結果うまれてきたパフォーマンスが純粋に音楽として素晴らしく、ここまで語ってきたような小難しいことなしに、心震える音楽として我々聴衆の胸に突き刺さったのだ。私個人としてもあの日の興奮は、生涯決して忘れ得ぬ体験のひとつとなっている。

現在、ベルリン・フィルやコンセルトヘボウ管をはじめとする世界トップクラスのモダン・オーケストラからも引く手あまたのロト。そんな多忙なスケジュールをぬって、都響のために何とか時間を確保してくれたのである。いまから楽しみでならない。好き嫌いを問わず、オーケストラ芸術の将来を知るためにも絶対に足を運んでほしい公演なのだ。

文:音楽ライター 小室敬幸