広田智之

オーボエ 首席奏者

広田智之 (ひろたともゆき) Tomoyuki HIROTA

(2006年3月1日入団)

1984年国立音楽大学に入学。
国立音楽大学在学中に、日本フィルハーモニー交響楽団に入団。
1988年~2000年8月まで同団の首席オーボエ奏者を務める。
2000年9月にソリストデビューを果たし、東京:カザルスホール、大阪いずみホールにて記念コンサートを行い高い評価を受けた。その後2003年には京都:府民ホール・アルティ、東京:白寿ホールにて、2005年には東京:浜離宮朝日ホールにてオーボエ・リサイタルを行い、いずれも高評を博す。
2001年9月~2004年8月まで、日本フィルハーモニー交響楽団にわが国のオーケストラとしては初の、ソロ・オーボエ契約で迎えられ、2002年3月の日本フィルヨーロッパツアーにおいては、ロンドンタイムズ紙に名指しで絶賛された。
2006年より東京都交響楽団首席オーボエ奏者を務める。
紀尾井ホール室内管弦楽団、オイロス・アンサンブルのメンバーとしても活躍する。
これまでに、日本フィルをはじめ、東京都交響楽団、東京シティ・フィル、ミラノ・スカラ座弦楽合奏団、チェコ・チェンバーソロイスツ、ザルツブルグ室内オーケストラ、モスクワソロイスツ、ベトナム国立交響楽団、国内外のオーケストラ、室内楽団とコンチェルトを多数協演。NHKの芸術劇場やFMリサイタルにも度々出演する。
多忙なオーケストラ活動とともに、近年は映像音楽の分野でも目覚しい活躍を続けており、クラシックにとどまらず、ポップス、ジャズなどのジャンルレスな活動が注目を集め、都内ライブハウスでのライブは毎回人気を博している。
ソロCDはビクターエンタテインメントより「ロミオとジュリエット」「ダブリン・カフェ」「青の宇宙」、オクタヴィア・レコードよりJ.S.バッハ作品集「パルティータ」、「モーツァルト オペラ デュオ」、J.S.バッハ作品集「アフェトゥオーソ」、「Morceau de Salon -オーボエ有名ソナタ集-」、「ファンタジー・パストラール -20世紀オーボエ作品集-」、「R.シュトラウス:オーボエ協奏曲、4つの最後の歌 他」、「モーツァルト:オーボエ四重奏曲&五重奏曲他」、「オーボエ・アンサンブル HAIM」、「歌う葦 -邦人オーボエ作品集-」、日本アコースティックレコーズより「カメレオン・バッハ Chameleon Bach」がリリースされている。
日本音楽コンクール、日本管打楽器コンクールなど主要コンクールの審査員を務め、現在は、上野学園大学教授、桐朋学園大学特任教授として後進の指導にも努めている。日本オーボエ協会常任理事。


●CD情報
広田智之「THE BEST」

曲目/
J.S.バッハ:
 ソナタ BWV1030b より 第1楽章
 ソナタ BWV1034 より 第2楽章
モーツァルト:オーボエ四重奏曲 K.370 より 第1楽章
モーツァルト/編曲者不詳:
 歌劇《フィガロの結婚》より「恋とはどんなものかしら」
 歌劇《後宮からの誘拐》より「お前とここで会わねばならぬ」
 歌劇《ドン・ジョヴァンニ》より「みんな楽しくお酒を飲んで」
シューベルト:冬の旅 より 1. おやすみ
シューマン:詩人の恋 より 1. うるわしい5月に
R.シュトラウス:あした 作品27-4
プーランク:オーボエ・ソナタ より 第1楽章
ヒンデミット:オーボエ・ソナタ より 第1楽章
デュティユー:オーボエ・ソナタ より 第2楽章
北爪道夫:歌う葦
真島俊夫:白と黒

広田智之(オーボエ)
発売元:オクタヴィア・レコード CD紹介+購入ページ OVCC-00150 ¥3,000+税
広田智之「THE BEST」<br />
¥3,000+税
広田智之「THE BEST」
¥3,000+税

私の音楽はじめて物語

リハーサルで(22歳ころ)/渡邉暁雄氏と
リハーサルで(22歳ころ)/渡邉暁雄氏と
 自分にとって、齋藤勇二先生(東京フィル首席オーボエ奏者/当時)との出会いは大きかったですね。5日間でエチュード1冊(百数十曲)の暗譜を要求する、田舎者の僕には想定外の強者(つわもの)師匠でしたが、2年間におよぶ激しいレッスンのおかげで吹くこと(とりわけ技術面)に自信が持てるようになった記憶があります。
国立音大での学生時代、丸山盛三先生(N響オーボエ奏者/当時)にもお世話になりました。大学1年から東京佼成ウインドオーケストラで常連エキストラのような形で吹かせていただき、大学2年で初めてプロ・オケのエキストラへ行ったのが東京フィルの首席(!)。無我夢中でしたが、いきなりプロの現場で鍛えられました。その後、大学4年で日本フィルへ入団、翌1988年から12年間、同フィルで首席を務めさせていただきました。
ソロのレパートリーを温め直す必要を感じて、2000年にソリストとしての活動を始めたのですが、それは1年だけ。翌年、日本フィルが日本のオーケストラとしては初めてとなるソロ・オーボエ契約(原則として月1回、定期演奏会に出演)を用意してくださったので、オケに復帰しました。
契約を2004年に終え、その後はソロと教育を軸にするつもりでいたのですが、いくつかのオーケストラから首席オーボエ奏者のオファーをいただいて。先陣を切って熱心に誘っていただいたのが都響でした。エキストラとして何回か演奏に参加して、音楽的なセンスがとても合うなと感じたんです。メンバー全員が徹底して「聴き合う」意識を持っていて、歌い回しの変化などに瞬時に反応できる。
管楽器は、弦楽器に比べるとテンポが遅れることが多いんです。音楽的なアプローチをしようとか、表情を出そうとか、何か仕掛けを試みると、却ってタイミングがずれたりする。
ある日のリハーサルで、管楽器が遅れ気味になった時に、指揮者が「管楽器の皆さん、もうちょっとテンポを前ノリで」みたいな指示を出したんです。するとソロ・コンマスの矢部達哉さんがすっと立って、「管楽器のニュアンスを聴きましょう。僕らも速いんです」と一言。
もうびっくりしてしまって。そんなことを言うコンマスに出会ったことがなかったですから。ふだんから「聴き合う」意識を徹底して練習し、演奏しているわけで、素晴らしいオーケストラだなと思いました。
都響に入ってもう一つ驚いたのは、音楽鑑賞教室のクオリティの高さ。午前中の本番であろうと何であろうと、皆が全力投球していて、定期演奏会と同じテンションの音がする。これは誇るべきことだろうという気がします。
木管セクションの中では、いつの間にか年長メンバーの1人になりましたが、演奏家は経験が何年あろうと、「今」「ここ」のステージでどれだけのことができるか、が全て。今後もさらなる理想を目指して進んでいきたいと思っています。

(『月刊都響』2015年3月号 取材・文/友部衆樹)

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