糸井裕美子

クラリネット

糸井裕美子 (いといゆみこ) Yumiko ITOI

(2010年3月1日入団)

 兵庫県立西宮高等学校音楽科、東京藝術大学、ケルン音楽大学卒業。第8回日本木管コンクール(クラリネット部門)第1位、第68回日本音楽コンクール第2位など、入賞多数。クラリネットを小川哲生、鈴木良昭、村井祐児、ラルフ・マノの各氏に、室内楽をアルバン・ベルク弦楽四重奏団などに師事。東京藝術大学管弦楽研究部講師を経て、2010年に都響へ入団。洗足学園音楽大学非常勤講師。

私の音楽はじめて物語

自宅の庭で(小学3年)
自宅の庭で(小学3年)
 音楽との出会いは、4歳から始めたピアノです。母が近所の子どもたちにピアノを教えていたので、そこで手ほどきを受けました。小学校の途中から専門の先生に習うようになり、結構厳しいレッスンでしたけれど、弾くことは好きでしたし、ずっと音楽をやっていくのかな、と感じていましたね。
 運動も好きだったので、小学5年ころから学校のミニバスケット部に入り、一応スタメンだったんですよ。試合や遠征もこなして、卒業まで続けました。
 小学6年の夏休みに、地元の中学校の吹奏楽部が小学校の体育館でやったコンサートを聴きました。ピアノは、1人で楽器と向き合ってひたすら練習する、という世界ですから、皆で合奏する響きがすごく新鮮で。中学校では吹奏楽部へ入ろうと。
 中学に入学した時の体力テストで、50メートル走の記録がとても良かったので、体育の先生から「陸上部に入るべきだ」とスカウトされました(笑)。ちょっと迷ったんですが、結局、吹奏楽部へ。トランペットを希望したんですが、顧問の先生が「うーん、糸井さんは、クラリネットの顔だよね」と。先生はトランペット出身の方で、歯並びや唇の形などから、管楽器の適性が分かったみたいですね。
 それでクラリネットを始めました。割とすぐに音は出せるようになったんですが、私は固定ドの絶対音感があるので、移調楽器であるクラリネットに慣れるのには苦労しました。吹奏楽コンクールに熱心な学校で、朝練もあり夏休みも毎日練習があって、関西大会までは行っていました。
 高校の音楽科へ進もうと思った時、最初はピアノで、と考えていました。でも部活動でピアノの練習時間が取れなくなってきたのと、クラリネットがすごく面白くなってきたので、これはもう、クラリネットで行こうと。小川哲生先生(元大阪フィル)に相談したところ、専念できる時間ができてからの方が良いから、ということで、部活動を引退した中3の夏休み明けからレッスンを受け始めました。
 県立西宮高校音楽科から東京藝大へ進み、ケルン音楽大学への留学を経て97年に帰国。フリーで数年間活動、東京藝大管弦楽研究部講師を6年ほど務め、都響への入団は2010年です。フリー時代からいくつかのオーケストラでエキストラとして演奏させていただいたんですが、やはり都響の音が好きで。演奏の精度を追求しつつ、同時に互いの意見も言えて、皆で良いものを作っていこう、という雰囲気がとても好きですね。
 今、自分たちを勝手に「日本一のクラリネット・セクション」と呼んでいるんですが、それぞれの個性を尊重して、音楽上のバトルもやりながら、良いサウンドを作れるように日々努力していますし、今後もそうありたいと思っています。

(『月刊都響』2012年9月号 取材・文/友部衆樹)

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