蔭井清夏

第1ヴァイオリン

蔭井清夏 (かげいさやか) Sayaka KAGEI

(2020年3月1日入団)

私の音楽はじめて物語

シンガポールで弦楽合奏に参加(7歳)
シンガポールで弦楽合奏に参加(7歳)
 ヴァイオリンを始めたのは4歳の時。幼稚園のクリスマス・コンサートでピアノ・トリオが来園し、楽器を目の前で見て、ヴァイオリンはかっこいいなあ、と。自分から「やりたい」と言ったらしいです。憶えていないのですが(笑)。
 スズキ・メソードの教室へ通いましたが、父の仕事の都合で5歳の終わりにシンガポールへ。英語は話せないですし、生活に慣れるのが大変でした。偶然、近所にチュア・リクウク先生(シンガポール響ゲスト・コンサートマスター/当時)が住んでいらして、弓の持ち方や音感など基礎からレッスンをしていただきました。ここで徹底的に音階をみていただいたのは今でも自分に残っています。現地の日本人会の方が主宰、シンガポール響メンバーもサポートで入る弦楽合奏のコンサートが年1回あり、そこに参加して、人と一緒に演奏する楽しさを知りました。
 小4の秋に日本へ帰国しましたが、今度は日本語が話せない。環境の変化に適応するのが大変でした。ヴァイオリンを再開、年齢的にもたくさんの曲を弾けるようになり、小6の時に弾いたのがラロの《スペイン交響曲》。懸命に練習して発表会で演奏、「練習すれば弾ける」を体感できたのは大きかった。ヴァイオリンを本格的にやりたい、と思ったのはこのころですね。
 小6の終わりにジュニア・フィルに入り、生まれて初めて弾いたオーケストラ曲がマーラーの交響曲第5番(笑)。1人では絶対出せないスケールの大きさに衝撃を受け、オーケストラをやりたい、と思う原点になりました。ジュニア・フィルは都響入団直前まで、10年ほど続けました。
 中1から東京藝大附属音楽高校の受験準備に入り、合格。藝高入学から大学卒業まで、大谷康子先生に師事。技術的なことはもちろん、ヴァイオリンを通して何かを心から表現する喜び、音楽の素晴らしさをどう伝えるか、音楽家として一番大事なことを教えていただきました。
 藝高では室内楽に熱中。学内の室内楽コンサートに向けて仲間と合わせを繰り返す日々で、カルテットからピアノを含む編成まで、いろいろな種類の室内楽に取り組みました。東京藝大へ進学し、2年と3年の時に小澤征爾音楽塾で『ジャンニ・スキッキ』『子どもと魔法』『カルメン』に参加、全てでコンサートマスターをさせていただきました。オペラを本格的にやったこと自体が初めてで、プロになるための実践の場として貴重な体験でした。
 大学4年の5月に都響のオーディションを受け、10月に試用期間に入りました。初めて定期で弾いたのは小泉和裕さん指揮によるブルックナーの交響曲第7番。楽員の皆さんのパワーとピアニシモの繊細さ、音のクオリティの高さに感動。これまでのオーケストラの概念が完全に覆る体験で、一生忘れないと思います。
 2020年3月に正式入団、同時にコロナ禍で演奏中止期間に。4ヵ月間、個人で練習しつつ待機したのは精神的にキツく、7月の演奏再開は心底ほっとしました。都響で弾けることが本当に嬉しいですし、まだまだ勉強の日々です。都響を聴きに来てくださるファンの皆さまに感動をお届けできるよう、日々研鑽を続けたいと思います。

(『月刊都響』2022年1月号 取材・文/友部衆樹)

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