及川博史

第1ヴァイオリン

及川博史 (おいかわひろし) OIKAWA Hiroshi

(2008年5月入団)

 桐朋学園女子高校音楽科(男女共学)を経て桐朋学園大学および同大学研究科修了。ウィーン国立音楽大学ポストグラデュアル修了、シオン・ヴァレー国際ヴァイオリン・コンクール(スイス)入賞、ならびに同国際音楽祭に出演。これまでヴァイオリンを梅津南美子、シュロモ・ミンツ、ドーラ・シュヴァルツベルク、レオニード・ソロコフに師事。都響第2ヴァイオリン奏者。

私の音楽はじめて物語

初めての発表会(中学1年)
初めての発表会(中学1年)
 私がヴァイオリンを始めたのは10歳(小学5年)の時。ですからスタートは遅かったんです。母がクラシックを好きでよく聴いていましたから、音楽はいろいろ耳に入っていたはずなんですが、同じ芸術でも、そのころの私は彫刻や絵画など美術の分野に興味がありました。
 ところが小学5年の時、学校で音楽鑑賞教室があり、生のオーケストラを初めて聴いて、すごい衝撃を受けました。どこのオーケストラで、曲が何だったかも憶えてないんですが、独特の音に聴こえて、ヴァイオリンを弾いている人の姿が格好良かった。それで近所で教えている先生のところへ行って、「プロになりたい」と真剣に言いました。
 もちろん先生には「今からでは無理です」と言われたんですが(笑)、そう言われたことは、後ほど自分が頑張る起爆剤となりました。ともかく楽器を始め、1年後くらいに先生が変わり、中学に上がるころに「プロになるには音楽高校を受験しなければ」という話になって。音楽高校の存在すら知らなかったんですが、中2の時から、桐朋で教えていらした梅津南美子先生にレッスンを受け始めた。熱心かつ厳しい先生で、基礎から叩き込まれました(梅津先生は、桐朋入学後もずっとお世話になった恩師です)。
 ピアノもソルフェージュも中1から始めたので、大変でしたね。聴音の最初のレッスンの時に、和声の楽譜の書き方も分からず、戸惑うことが多かったです(笑)。
 中学時代に梅津先生の薦めでシュロモ・ミンツのリサイタルを聴いて、これも衝撃的でした。その後、彼の大ファンになってしまうのですが、独特の美しい音色と、ミンツは一つのリサイタルでヴァイオリンとヴィオラの両方を弾いたので、桐朋在学中はヴィオラを弾くことにも夢中になりました。今でもヴァイオリンの低音域が好きで、内声に面白さを感じるのはそのためかもしれません。
 ミンツ先生はそのころ、イスラエルでしか教えてなかったので、イスラエルには2回行き、それぞれ1ヶ月ほど滞在してレッスンを受けたことがあります。彼から学んだのは音の方向性に伴うヴィブラートの使い方、弓の位置や圧力のかけ方などですね。
 桐朋学園大学を卒業後、ウィーン国立音楽大学ポスト・グラデュアル(研究科)に2年間留学し、ドーラ・シュヴァルツベルク教授に師事。彼女からは非常に多くのことを学びました。帰国後、縁あって都響のオーディションを受けることができて、入団は2008年です。
 私の場合、誰かの音を生で聴いた衝撃が、人生の転機になっています。ですから、これまで自分が与えられたものを、何かの形で返していきたいなと。音楽鑑賞教室でも、子どもたちが音楽って素晴らしい、と思ってくれるような演奏をしていきたいですね。

(『月刊都響』2012年9月号 取材・文/友部衆樹)

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