定期演奏会 Aシリーズ

第929回定期演奏会Aシリーズ

終了日時：2021年6月14日（月） 19:00開演（18:00開場）

場所：東京文化会館

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出演

指揮／秋山和慶
ヴァイオリン／金川真弓
※当初予定していた指揮者、ソリストより変更になりました。

プロフィール一覧

秋山和慶 Kazuyoshi AKIYAMA（指揮）

1941年生まれ。斎藤秀雄のもとで指揮法を修め、1963年に桐朋学園大学音楽学部を卒業。1964年2月に東京交響楽団を指揮してデビューののち同団の音楽監督・常任指揮者を40年間にわたり務める。その間、アメリカ響音楽監督、バンクーバー響音楽監督(現在桂冠指揮者)、シラキュース響音楽監督などを歴任。また、ニューヨーク・フィル、ボストン響、クリーヴランド管、シカゴ響、ケルン放響、ベルリン放響、北ドイツ放響、スイス・ロマンド管など世界の一流オーケストラに客演している。
これまでにサントリー音楽賞、芸術選奨文部大臣賞、大阪芸術賞、毎日芸術賞、川崎市文化賞、京都音楽賞大賞などを受賞。2001年紫綬褒章、2011年旭日小綬章を受章。2014年度文化功労者に選出。
現在、中部フィルハーモニー交響楽団芸術監督・首席指揮者、日本センチュリー交響楽団ミュージックアドバイザー、東京交響楽団桂冠指揮者、広島交響楽団終身名誉指揮者、九州交響楽団桂冠指揮者など多くの任を務めるほか、洗足学園音楽大学芸術監督・特別教授、京都市立芸術大学客員教授を務めている。

金川真弓　Mayumi KANAGAWA（ヴァイオリン）

2019年チャイコフスキー国際コンクール第4位、2018年ロン＝ティボー国際音楽コンクール第2位＆最優秀協奏曲賞を受賞。プラハ放送響、マリインスキー劇場管、ベルリン・コンツェルトハウス管、ドイツ・カンマーフィル、フィンランド放送響、ベルギー国立管、フランス国立ロワール管、モスクワ・フィル、ロイヤル・フィル等、日本では、N響、都響、読響をはじめ全国各地のオーケストラに客演し、ハンヌ・リントゥ、セバスティアン・ヴァイグレ、ユーリ・シモノフ、パスカル・ロフェ、ヴァシリー・シナイスキー、アレクサンダー・シェリー、ヒュー・ウルフ、カーチュン・ウォン、尾高忠明、小泉和裕、井上道義、広上淳一等の指揮者と共演。2023年、デビュー・アルバム『リサイタル(RECITAL)』をリリース。
　ドイツ生まれ。ハンス・アイスラー音楽大学でコリヤ・ブラッハーに、また名倉淑子、川崎雅夫、ロバート・リプセットの各氏に師事。
　使用楽器は、日本音楽財団貸与のストラディヴァリウス「ウィルへルミ」（1725年製）。

photo: ©Victor Marin

曲目

シベリウス：交響詩《吟遊詩人》op.64

曲目解説
シベリウス：ヴァイオリン協奏曲ニ短調 op.47

曲目解説
プロコフィエフ：交響曲第7番嬰ハ短調 op.131
※当初予定していた曲目より変更になりました。　

曲目解説

　斬新な交響曲第4番イ短調op.63（1911）で表現主義的世界を切り開いたジャン・シベリウス（1865～1957）は、その後、再び新たな作風を求め始める。第一次世界大戦（1914～18）に向かいつつあった不穏なこの時期、ヨーロッパ音楽界も新しい潮流に覆われ始め、アルノルト・シェーンベルク（1874～1951）やイーゴリ・ストラヴィンスキー（1882～1971）らが衝撃作を次々と世に送り出そうとしていた。そうした時代の動きに敏感に反応しつつも、50歳を目前にしたシベリウスは自らの進むべき道を冷静に見きわめることにする。1913年に初演された交響詩《吟遊詩人》は、その嚆矢となった作品である。
　シベリウスは《吟遊詩人》の初演後、出版に向けてすぐに楽譜をブライトコプフ＆ヘルテル社へ送ったが（この初稿は紛失）、曲は大規模な作品の導入のような雰囲気を持っているので組曲化したらどうか、と出版社に提案される。そして実際、シベリウスは《吟遊詩人》を取り入れた3曲からなる組曲に取り組んでもいる。しかし彼は結局その組曲化に満足せず、元の作品に改訂の手を加え、単独の交響詩として出版した。
　《吟遊詩人》というタイトルについては、フィンランドのスウェーデン語系詩人ヨハン・ルドヴィグ・ルネベルィ（1804～77）の『吟遊詩人』（1870）からの影響を指摘する向きもあった。だがシベリウスはそれを否定しており、敢えていうなら遥かヴァイキング時代の北欧バラードのイメージだという。
　曲は寂寥感とノスタルジーに満ちあふれ、古（いにしえ）の吟遊詩人の竪琴を思わせるハープが終始、重要な役割を果たしている。上下運動する微細な動機（ヴィオラが提示する「♭ド♭レ♭ミ／♭ミ♭レ♭ド」）が何度も明滅しながら控えめに進んでいき、やがて曲の終盤で大きな盛り上がりを見せると、最後はティンパニの余韻を残しつつ柔らかなmpで静かに消えていく。
（神部智）

作曲年代	1913～16年
初　　演	初稿／1913年3月27日　改訂稿／1916年1月9日　いずれも作曲者指揮　ヘルシンキ・フィル
楽器編成	フルート2、オーボエ2、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、大太鼓、タムタム、ハープ、弦楽5部

　1904年に発表されたシベリウスのヴァイオリン協奏曲は、彼が残した唯一の協奏曲である。もともとヴァイオリニストを目指していたシベリウスは、この楽器の演奏技法や表現上の可能性を全て知り尽くしていた。その彼が満身の力をこめて作曲したヴァイオリン協奏曲は、20世紀を代表する傑作協奏曲として、今や高い人気を博している。
　シベリウスがヴァイオリン協奏曲に取り組んだきっかけは、友人アクセル・カルペラン（1858～1919）の進言である。交響曲第1番ホ短調op.39（1899／1900改訂）が国際的に評価され、続く第2番ニ長調op.43（1902）の大成功でシンフォニストとしての自信を深めていたシベリウスでも、協奏曲の創作は全く新たな挑戦だったに違いない。当時のシベリウスは、支配国ロシアの圧政に抵抗して高まりつつあったフィンランドの重苦しいナショナリズムから距離を置き、より清澄な作風に向かおうとしていた。おそらく彼は協奏曲の創作を通して、これまでとは異なる表現世界の扉を開こうとしたのだろう。しかし、その挑戦の道のりは困難をきわめることになった。
　最初の試練は1904年初頭に披露された初稿の大失敗である。その原因の一つとして、ソリストに急遽抜擢されたヴィクトル・ノヴァチェク（1875～1914）の力不足を指摘する者もいる。だが鉛のように重々しい曲調や、演奏効果の乏しい独奏ヴァイオリンの超絶技巧にも見逃せない問題があった。それを自覚せざるをえなかったシベリウスは、初稿を封印して大幅な修正を加えることにする。より透明で峻厳な響きを求め、作品の内部構造にもメスを入れた改訂作業は大いに難航したという。なお、その間にシベリウス一家は喧噪なヘルシンキを離れて、自然豊かなヤルヴェンパーに転居している。
　改訂稿の初演はカレル・ハリール（1859～1909）をソリストに迎え、リヒャルト・シュトラウス（1864～1949）指揮ベルリン・フィルという豪華な陣容で、1905年秋に行われた。しかし、この改訂稿も名ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒム（1831～1907）から「退屈で飽き飽きする」と酷評されてしまう。それでもジネット・ヌヴー（1919～49）やヤッシャ・ハイフェッツ（1901～87）、ダヴィド・オイストラフ（1908～74）ら、多くのヴァイオリニストの尽力により協奏曲の真価が少しずつ認められると、その後広く世界中で演奏されるようになっていく。
　第1楽章　アレグロ・モデラート　全楽章中もっとも長大で複雑な構成を持つ。ソナタ形式を下敷きにしているが、独奏ヴァイオリンの精緻なカデンツァを展開部として配置するなど、シベリウス独自のデザインに基づいている。冒頭の主題が内包するドリア旋法の要素が全体の響きに大きな影響を与えている。
　第2楽章　アダージョ・ディ・モルト　ロマンス風の抒情的な緩徐楽章。神秘的な色彩を帯びている一方、曲の後半ではソリストの技巧的なパッセージが現れて緊迫した雰囲気になる。
　第3楽章　アレグロ・マ・ノン・タントソリストに圧倒的な力量を要求する躍動感に満ちたフィナーレ。性格のはっきりした2つの主題を軸にしながら、終始ダイナミックに高揚していく。
（神部智）

作曲年代	1903～04年　1905年改訂
初　　演	初稿／1904年2月8日　ヘルシンキ　ヴィクトル・ノヴァチェク独奏　作曲者指揮　ヘルシンキ・フィル改訂稿／1905年10月19日　ベルリン　カレル・ハリール独奏　リヒャルト・シュトラウス指揮　ベルリン・フィル
楽器編成	フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦楽5部、独奏ヴァイオリン

　サンクトペテルブルク音楽院在学中から斬新な作風で物議を醸してきたセルゲイ・プロコフィエフ（1891～1953）は、音楽院を卒業して3年後の1917年（ロシア革命勃発の年）、交響曲第1番ニ長調op.25《古典交響曲》を書き上げた。伝統的な形式や明快な主題など擬古典的な様式をとりながら、その精神はあくまでモダンなもので、細部の大胆な和声処理や旋律の風刺性など古典様式をパロディ化したものとなっている。
　1918年にこの曲を自らの指揮で初演したのち、彼は革命の混乱を避けてロシアを離れ、最初アメリカで、その後ヨーロッパで活動する。外国滞在中の彼は持ち前のモダン性を発揮した作品を次々と生み出した。それはこの時期に書かれた3曲の交響曲―「鉄と鋼で出来た」といわれる第2番ニ短調op.40（1925）、それぞれ自作のオペラとバレエの素材に基づいた第3番ハ短調op.44（1928）と第4番ハ長調op.47（初稿／1930）―に如実に表れている。
　しかし外国での生活の中で彼はロシア人としての自覚を強め、また先鋭化の方向のみに走ることにも疑問を感じるようになっていた。そして何度か短期的に、ソヴィエト体制となったロシアを訪れ、母国への思いを強くしていったようだ。一時的滞在で見た新生ソヴィエト連邦が活力ある魅力的なものに思えたこともあり、彼は1930年代半ばに祖国に復帰する。
　しかし程なく彼はスターリン独裁体制下のソ連の実情が厳しいものであることを思い知らされることになる。社会主義リアリズムの文化政策のもと、芸術家は民衆にわかりやすい明快な様式による作品の創作が求められ、これに反する芸術は激しく批判された。当然プロコフィエフも以前の斬新路線からの転換を余儀なくされたが、もともと職人的な資質の持ち主であった彼は、かつて《古典交響曲》で古典形式に鋭い現代精神を結合させたように、自身の資質を巧みに社会主義リアリズムの方法に融合させて、独自の様式を確立していく。上から強いられた枠の中でなお自身の個性を見失わない様式を追求していったところに彼の強さがあった。第二次世界大戦（1939～45）における独ソ戦の厳しい状況の中で書かれた交響曲第5番変ロ長調op.100（1944）は、そうした彼のスタイルの頂点を形作る傑作といえるだろう。
　こうして彼はソ連を代表する作曲家としての地位を確かなものとし、国家から数々の賞も授与されるが、そうした名誉は常に粛清の危険と背中合わせにあった。そして1948年、芸術家に対する弾圧として悪名高いジダーノフ批判においてプロコフィエフも槍玉にあげられ、シリアスな交響曲第6番変ホ短調op.111（1945～47）をはじめとする作品が徹底的に非難されることになる。それ以前から健康上の問題も抱えていた彼にとってその打撃は大きく、以後晩年の彼の生活は精神面でも健康面でも惨めな状況だったと伝えられている。
　しかしその中にあって彼は幾つかの重要な大作を手掛けていった。その一つで、また事実上彼が自分の手で完成させた最後の作となったのが交響曲第7番嬰ハ短調op.131（1951～52）である。ソ連の若人の精神を称え、自らの青春の思いを表したといわれる（そのため《青春》の標題で呼ばれることもある）この交響曲は、ジダーノフ批判後の作だけにきわめて明快なスタイルをとり、旋律主題も親しみやすい。実際1952年10月の初演では聴衆に熱狂的に受け入れられ、病をおして出席したプロコフィエフにとって最後の栄光の機会となった。
　しかし冒頭の第1楽章第1主題に示される寂しげなメランコリーをはじめとして随所に孤独な思いが滲み出ており、この曲が単に社会主義リアリズム的な明るい青春賛歌として書かれたのではないことは明らかだ。特にそのことは、もともとこの作品が寂寥感のうちに静かに終わるよう書かれたことに表れていよう。初演の指揮をとったサムイル・サモスード（1884～1964）はもっと明るい終結にすべきだと忠告し（それは当局の意向でもあった）、結局プロコフィエフは大団円風の躍動的な終結部を付加したのだが、彼自身これが不本意であったことは最初の形での出版を強く望んだことに表れている（結局、付加部分は付録として収録された）。いかにも社会主義リアリズムの様式で作り上げたこの曲において彼が表現したかったのは、青春の思い出をとおした晩年の喪失感だったのだろう。
　第1楽章　モデラート　嬰ハ短調　4分の4拍子　上述のような憂いを含んだ物寂しい第1主題に始まる。対照的に第2主題は光が射してくるような大らかな広がりを持ったもの。提示部を締めくくるオーボエとグロッケンシュピールによる小結尾主題も重要な要素となる。ソナタ形式だが、劇的な展開よりも、回顧的な気分が支配している。
　第2楽章　アレグレット～アレグロ　ヘ長調　4分の3拍子　3つの主題を持つワルツ。バレエ作曲家プロコフィエフの面目躍如たる楽章だが、ここにもどこか懐旧の情が感じられる。
　第3楽章　アンダンテ・エスプレッシーヴォ　変イ長調　4分の4拍子　これもまた懐かしい叙情的気分に覆われた美しい緩徐楽章。2つの主題を持つ自由な形式をとる。
　第4楽章　ヴィヴァーチェ　変ニ長調　4分の2拍子　一転して軽妙で陽気な躍動するフィナーレ。幾つもの主題が入れ替わり現れるロンド風の構成をとる。その頂点で第1楽章の第2主題が大きく立ち現れ、そして第1楽章小結尾主題が示されてコーダとなる。寂しげな叙情的調べの背後に金管や打楽器の脅かすような響きが聴こえるこのコーダには晩年のプロコフィエフの万感の思いが込められているようだ。しかしすでに触れたように、より社会主義リアリズムに相応しいような明朗な終わり方にするよう彼は忠告され、さらなる終結部（ロンド主題の回帰）を付け足した。本日はこれを付加した形で演奏される。
（寺西基之）

作曲年代	1951～52年
初　　演	1952年10月11日　モスクワ　サムイル・サモスード指揮
楽器編成	ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、トライアングル、ウッドブロック、タンブリン、小太鼓、大太鼓、シンバル、シロフォン、グロッケンシュピール、ハープ、ピアノ、弦楽5部

【当日券情報】第929回定期演奏会Aシリーズ（6/11up）
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、都響WEBチケットにて当日券を発売いたします。
会場での対面販売、及び都響ガイドでの電話販売は行っておりませんのでご了承ください。

販売日時：6月14日（月）10:00～18:00　無くなり次第終了
販売方法：都響WEBチケット（セブンイレブン支払・発券／カード払い・電子チケットのみ）
※お申込みには、都響WEBチケットへの事前登録が必要です（登録無料）。
※全席種を販売。
※当日券はシルバー割引・U-25割引・ハンディキャップ割引はございません。
　割引をご希望の方は前売りにてお求めください。
※「来場されるお客様へのご案内」の内容に同意いただいた上でお申込みください。
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出演者・曲目変更のお知らせ　詳細はこちら（4/20up）

※等間隔での空席設定は行いませんが、引き続き、感染症の拡大防止のため、一部の座席は販売いたしません。また、政府や自治体によるイベント開催要件に変更があった場合は、開演時間の変更、販売の一時停止や入場者数上限の設定等を行います。
ご購入前に最新情報をご確認の上、ご購入くださいますようお願いいたします。

4月から7月までの定期演奏会は1回券のみ販売いたします。9月以降の公演につきましては、会員券の発売を検討しております。詳細は、6月頃に改めてご案内予定です。

・基礎疾患（糖尿病・心不全・呼吸器疾患等）をお持ちの方や体調に不安のある方は、医師の判断や関係機関の情報をご確認の上、慎重なご判断をお願いいたします。当面の間、当日券は必ず販売いたします。外出や体調に不安のある方は当日券（都響WEBチケットのみ）をご検討ください。
・必ず、「来場されるお客様へのご案内」の内容に同意いただいた上でお申込みください。
・急遽出演者や曲目変更、または公演中止となる場合がございます。公演中止の場合を除き、払い戻しはいたしません。