プロムナードコンサート

プロムナードコンサートNo.404

終了日時：2023年9月18日（月・祝） 14:00開演（13:00開場）

場所：サントリーホールホール案内座席表

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出演

指揮／ローレンス・レネス
ヴィオラ／タベア・ツィンマーマン

プロフィール一覧

ローレンス・レネス　Lawrence RENES（指揮）

オランダ＝マルタ人指揮者、ローレンス・レネスはオペラと交響楽双方の分野で高く評価され、オーケストラと歌手とのバランスをとる非の打ちどころのない才能、また情熱的でニュアンスに富んだ演奏が称賛されている。前シーズンのハイライトはメルボルン響、シドニー響、サンフランシスコ・オペラ、ロンドン・フィル、リヨン国立管、マーラー室内管、（南アメリカ・ツアー）、マルタ・フィル等との公演。その他、ブリュッセル、シアトル、リスボン、サンタ・フェでのオペラ、フランス放送管、オスロ・フィル、サンパウロ州立響、ヘルシンキ・フィル、ニュージーランド響、N響、ソウル・フィル、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管、BBC響での管弦楽の演奏会に登壇。
かつてはスェーデン王立歌劇場の音楽監督を務め、モーツァルトから21世紀のレパートリーに取り組んだ。現代作品の熱心な支持者であり、特にジョン・アダムズの音楽と関りがあり、彼の『中国のニクソン』をサンフランシスコ・オペラ、『ドクター・アトミック』をイングリッシュ・ナショナル・オペラとオランダ国立オペラで指揮した。オランダ国立オペラとのDVDはニューヨーカー2008年の10ベスト・クラシカル・レコーディングの一つに指名された。

写真：©Mats Bäcker

タベア・ツィンマーマン　Tabea ZIMMERMANN（ヴィオラ）

ドイツのラール生まれ。3歳でヴィオラを始める。フライブルク音楽大学でウルリッヒ・コッホに、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院でシャーンドル・ヴェーグに師事。ジュネーヴ国際（1982年）、モーリス・ヴュー（83年）、ブダペスト国際（84年）の3つのコンクールで優勝。

パリ管、ロンドン響、イスラエル・フィル、チェコ・フィル含む世界の名だたるオーケストラと共演を重ねており、2022-23シーズンにはバイエルン放送響のアーティスト・イン・レジデンスを務めるほか、キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルとの共演でザルツブルク音楽祭、ルツェルン音楽祭、BBCプロムスに出演する。

これまでに、フランクフルト音楽賞、パウル・ヒンデミット賞をはじめとする多くの賞を受賞、そして2020年、世界の音楽の発展に最も寄与した作曲家、演奏家、音学学者に贈られるエルンスト・フォン・シーメンス音楽賞を受賞。

ハンス・アイスラー音楽大学ベルリン教授。

photo:©Marco Borggreve

曲目

モーツァルト：クラリネット協奏曲イ長調 K.622（ヴィオラ版）

曲目解説
プロコフィエフ：バレエ《ロメオとジュリエット》より
～ローレンス・レネス・セレクション～

曲目解説
：噴水の前のロメオ／情景／朝の踊り／少女ジュリエット／モンタギュー家とキャピュレット家／マスク／ロメオとジュリエット／僧ローレンス／タイボルトの死／別れの前のロメオとジュリエット／ジュリエットのベッドのそば～ジュリエットの葬式～ジュリエットの死

モーツァルト：クラリネット協奏曲イ長調 K.622（ヴィオラ版）

　作曲家が名演奏家に触発されて傑作を生み出すことはよくあるが、ウィーン時代のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト（1756～91）にとってクラリネット奏者アントン・シュタードラー（1753～1812）との出会いは、その意味できわめて大きかった。シュタードラーはウィーン宮廷楽団の名手で、モーツァルトの親友であるとともに秘密結社フリーメイスンの盟友でもあった。クラリネット五重奏曲（1789年）と本日のクラリネット協奏曲の2つの傑作も、シュタードラーの存在なくしては生まれなかっただろう。
　よく知られているように、モーツァルトは1791年12月5日の死の直前まで病床で《レクイエム》を作曲していた。しかしその最後の年も、秋までは旺盛な創造力で傑作を生み出している。クラリネット協奏曲もまさにこの年の秋、《レクイエム》に本格的に取り掛かる前に完成された。
そのためかつては、この作品全体に漂う達観したような澄明さを死の予感に結び付ける解釈もあったが、実際は第1楽章がシュタードラーのために1787年から90年の間に書いたバセットホルン（クラリネット属の楽器）用の協奏曲（未完）の改訂転用であるところから、そうした解釈は今日では見直しが必要とされている。
　結局、この改訂された第1楽章に新たに2つの楽章を作曲して、死の約1ヵ月前に完成をみたわけだが、実は普通のクラリネットのための協奏曲ではなく、より低い音域まで出るようにシュタードラーが発案したバセットクラリネットという楽器のために作られた。しかしこの楽器は普及せず、出版は通常のクラリネットの音域で演奏できるように直された形でなされた。こうして今日に至るまで普通のクラリネットで演奏されてきたが、新モーツァルト全集ではバセットクラリネット用の復元版も掲載され、近年のオリジナル志向の中では楽器を復元して本来の形で演奏する試みもなされている。
　本日演奏されるのはそのどちらでもなく、1802年に出版された編曲者不詳のヴィオラ用編曲版で、1999年にクリストファー・ホグウッド（1941～2014）の校訂によるピアノ伴奏版の形で復刻された（管弦楽パートは原曲のまま）。ヴィオラの特性と音域を生かすべく、クラリネットでこそ効果的な幅広い跳躍部分や高い音域で動く箇所を書き直しているだけでなく、全体にわたって独奏パートを大胆なまでに書き換えた編曲で、主要な主題こそ原型を保っているものの、例えばアルペッジョのパッセージや音階的な動きを大幅に変更したり、装飾によって本来の音型を大きく崩したりなど、ほとんどの部分の旋律線（特に16分音符の動き）が改変されているといっても過言ではない。原曲とはかなり趣が異なるものになっていることは否定できないが、モーツァルトの死後間もない時期に出た編曲版として興味深いものがある。
　第1楽章　アレグロ　イ長調　独奏と管弦楽の親密な掛け合いで流麗に運ばれる協奏風ソナタ形式楽章で、当編曲版ではヴィオラの華やかな動きが目立つ。
　第2楽章　アダージョ　ニ長調　独奏のカンタービレを生かした叙情的な緩徐楽章。この楽章での改変は両端楽章に比べると控えめである。
　第3楽章　ロンド／アレグロ　イ長調　原曲では軽妙さの中に織り込まれる陰影に後期のモーツァルト独特な味が感じられるが、編曲版では歯切れのよさがより際立つものとなっている。
（寺西基之）

作曲年代	1791年
初　　演	不明
楽器編成	フルート2、ファゴット2、ホルン2、弦楽5部、独奏ヴィオラ（原曲はクラリネット）

プロコフィエフ：バレエ《ロメオとジュリエット》より
　〜ローレンス・レネス・セレクション～

　『ロメオとジュリエット』は、シェイクスピアのみならず、歴史上もっとも有名な恋愛の物語だろう。当然、これを題材とした音楽作品も多い。セルゲイ・プロコフィエフ（1891～1953）のバレエはその中でも有名なもののひとつで、世界中のバレエ団の最も重要なレパートリーとなっている。しかし、この作品の運命は最初から順風満帆だったわけではない。
　プロコフィエフが《ロメオとジュリエット》に着手したのは1934年末だった。翌年5月に台本ができあがると作曲は一気に進み、9月初頭には全曲のピアノ版が完成する。ところが、リハーサルを重ねるうちに、「音楽が複雑すぎて踊れない」と踊り手から文句が出たり、2人とも死なないハッピーエンドの台本（「死人は踊れないから」というのが理由だったという）が物議を醸したりとトラブルが相次ぎ、ついにボリショイ劇場との契約は破棄され、上演の予定は白紙になってしまう。
　結局、バレエ全曲の初演は1938年12月30日、しかもソ連ではなくブルノ（チェコ）の劇場で行われることになるのだが、それより前、いつ初演が実現するかの見通しが立たなかったころ、音楽だけでも演奏会で演奏できるようにということで、プロコフィエフは、このバレエから組曲第1番および第2番を作成した。各7曲からなるこれらの組曲は、バレエよりも先に初演され、いずれも好評を得た。なお、第1番、第2番と比べると演奏機会は少ないが、1944年になってプロコフィエフは、さらに6曲を選んで組曲第3番を作っている。
　ところで、これらの組曲は、単にバレエ全曲版から曲を抜き出して組み合わせただけのものではない。プロコフィエフは、組曲を作る際に、曲としての構成を良くするために、複数の曲をまとめて1曲にしたり、一部を削ったりと、程度の差はあれ、どの曲にも何らかの手を加えている。楽器の変更も多い。プロコフィエフは、「舞台上で音楽が聞こえづらい」という踊り手たちの意見に従って、不本意ながら、初演前にオーケストレーションを厚めに修正しているので、修正前の形態が残っている組曲の方が本来の意図に近いとも言われる。実際、晩年の作曲者は、バレエの方も組曲と同じようなオーケストレーションに戻す計画を持っていたらしいが、これは実現しなかった。
　なお、現代の演奏会では、プロコフィエフの作った組曲をそのまま取り上げることは少なく、組曲から抜粋して物語に沿って配列しなおし、いわば、音によって『ロメオとジュリエット』の物語を描く大規模な交響詩のような形で演奏することが多い。本日の演奏会もそれに近い形なのだが、ローレンス・レネスは、3つの組曲から選んだ10曲の後に、バレエ全曲版の最後の3曲を加えるという珍しい形を
取っている。

　噴水の前のロメオ　組曲第3番第1曲。バレエ第1幕第2曲。バレエの冒頭、ロメオが登場する場面だ。なお組曲では、冒頭に6小節の序奏が付加されているが、この序奏で静かに奏される「愛」の主題は後ほど劇的に提示されるため、その時に初めて耳にした方が演奏効果が高いというレネスの判断で、今回はこれを省略し、バレエ第2曲とほぼ同じ形で演奏する。
　情景　組曲第1番第2曲。バレエ第1幕第3曲。朝、次第に活気づいていくヴェローナの街のようす。
　朝の踊り　組曲第3番第2曲。バレエ第1幕第4曲に、同じ主題をもつ第2幕第30曲を接合している。
　少女ジュリエット　組曲第2番第2曲。バレエ第1幕第10曲。ロメオと出会う前の、溌剌とした少女ジュリエット。
　モンタギュー家とキャピュレット家　組曲第2番第1曲。威圧的な冒頭はバレエ第1幕第7曲「大公の宣言」、有名な舞曲の部分は第1幕第13曲「騎士たちの踊り」だ。この2曲、バレエでは間に5つの曲が挟まれているのだが、全く違和感なく接合されている。
　マスク　組曲第1番第5曲。バレエ第1幕第12曲。敵であるキャピュレット家の舞踏会に、ロメオたちが仮面を着けて潜り込む。
　ロメオとジュリエット　組曲第1番第6曲。有名なバルコニーの場面。バレエの第1幕第19曲と第21曲を結合している。躍動的な第20曲をカットすることで、終始、陶酔的な愛の場面が続くことになった。
　修道士ローレンス　組曲第2番第3曲。バレエ第2幕第28曲。若い2人を助けようとする修道士ローレンスの音楽は、穏やかで優しさに満ちている。
　タイボルトの死　組曲第1番第7曲。ロメオの友人マーキュシオとジュリエットの従兄弟タイボルトの決闘、そしてロメオとタイボルトの決闘、タイボルトの死を描く激しい音楽で、バレエの第2幕第33、35、36曲をまとめている。単独で演奏されることも多い。
　別れの前のロメオとジュリエット　組曲第2番第5曲。バレエ第3幕第38、39、43、47曲をまとめている。タイボルトを殺してしまったロメオは、街から追放されることになる。ロメオはジュリエットに別れを告げるために、ひそかに彼女の寝室を訪れる。
　ジュリエットのベッドのそば～ジュリエットの葬式～ジュリエットの死　バレエ全曲版から。バレエ第50～52曲、すなわち最後の3曲。第50曲「ジュリエットのベッドのそば」は第3幕の終曲で、母親と乳母がジュリエットを起こしに来るが、ジュリエットは修道士ローレンスにもらった薬によって仮死状態になっているという場面だ。本日は、横たわるジュリエットを表す後半のみが演奏される。第51曲と第52曲は、この2曲のみでバレエの第4幕を構成する。第51曲「ジュリエットの葬式」では、ジュリエットが本当に死んだと思ったロメオが彼女の墓の前で自ら命を絶つ。第52曲「ジュリエットの死」は、墓で目覚めたジュリエットが息絶えたロメオに気づき、自分も後を追って死ぬ。なお、第51曲と第52曲は組曲第2番第7曲と第3番第6曲にも入っているが、バレエ全曲版とは細部が異なっている。
（増田良介）

作曲年代	1935年夏～1936年春、1944年（第3組曲）
初　　演	バレエ／1938年12月30日　ブルノ劇場　イーヴォ・プソタ振付　グィド・アーノルディ指揮　ゾラ・シェンベロヴァー（ジュリエット）　イーヴォ・プソタ（ロメオ）第1組曲／1936年11月24日　モスクワ　ジョルジュ・セバスチャン指揮第2組曲／1937年4月15日　レニングラード　作曲者指揮第3組曲／1946年3月8日　モスクワ　ウラジーミル・デクチャレンコ指揮
楽器編成	ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、テナーサクソフォン、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン6、コルネット、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、小太鼓、トライアングル、ウッドブロック、タンブリン、シロフォン、グロッケンシュピール、ハープ2、ピアノ（チェレスタ持替）、弦楽5部

【ソリスト・アンコール】（9/18up）
クルターグ：イン・ノミネ
　（ヴィオラ／タベア・ツィンマーマン）

【当日券情報】プロムナードコンサートNo.404（9/15up）
都響主催公演では、都響WEBチケットで当日券を販売いたします。
　【販売時間】
公演当日10:00～開演時間の30分前まで。　※無くなり次第終了
　【販売席】
全席種販売予定
　【販売方法】
都響WEBチケット（座席選択可）
　【受取・支払方法】
①セブンイレブンで発券
　・セブンイレブンでお支払い（クレジットカード、現金でお支払いただけます）
　・都響会員割引がご利用いただけます。　
※会場近くにセブンイレブンが無い場合もございます。事前にご確認の上、ご来場く
ださい。（東京文化会館とサントリーホールは近くにございません）
②電子チケット（スマートフォンとLINEアプリが必要です）
　・クレジットカードでオンライン決済
　・都響会員割引・U-25割引がご利用いただけます。

なお、WEB当日券に余裕がある場合にのみ、会場でも販売いたします。
会場販売では、
・開場時間から販売いたします。※会場販売分の販売枚数が無くなり次第終了。
・座席ランクは選べますが、座席の場所はお選びいただけません。
・お支払はクレジットカード、交通系IC、QRコード決済でお願いします。現金はご利用いただけません。
・U-25割引がご利用いただけます。

※必ず「来場されるお客様へのご案内」の内容をご確認ください。今後の状況によっては内容を変更させていただく場合がございます。必ず最新情報をご確認ください。
※急遽出演者や曲目変更、または公演中止となる場合がございます。公演中止の場合を除き、払い戻しはいたしません。

聴きどころ

何と言っても、名ヴィオリスト、タベア・ツィンマーマンが弾くモーツァルトのクラリネット協奏曲ヴィオラ版は聴きものです。そして、ローレンス・レネスの、きびきびとした指揮から繰り出される明快なサウンドにぴったりのプロコフィエフ「ロメオとジュリエット」は、組曲版と全曲版からのミックスで、物語のエッセンスをたっぷりと味わっていただけます。